前代未聞!オリンピック目前に非常事態宣言 ブラジル・リオ州財政危機で不安高まる

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6月23日、ドルネレス知事代行の自宅前ではリオデジャネイロ州立大学の教師たちが給与の不払いに抗議した(写真:AP/アフロ)

オリンピックとパラリンピックの開催が8〜9月に迫るブラジル。ところが、6月17日、開催地であるリオデジャネイロ州の州政府は州の税制が危機的状況に陥ったことを理由に、「非常事態宣言」を発令するとともに、連邦政府に対して財政的な支援を要請する事態に追い込まれた。

ブラジルは「火の車」の状態に陥っている。2015年の経済成長率は、マイナス3.8%と、「リーマン・ショック」の影響が直撃した2009年のマイナス0.1%以来のマイナス成長に落ち込んだ。2016年1~3月期の成長率も前期比年率マイナス1.14%と5四半期連続でのマイナス成長となるなど、景気低迷を脱していない。

先行きについては、オリンピックとパラリンピックの開催に向けた公共支出が景気を下支えすると見込まれる一方、これらが終了した後にはその反動で景気に下押し圧力がかかることも予想される。金融市場においては、今年の経済成長率もマイナスとなることは避けられないとみられており、仮にそうなれば世界恐慌以来となる2年連続のマイナス成長である。

期間中のインフラ運営に対し、連邦政府が緊急支援

リオデジャネイロ州の最大都市であるリオデジャネイロには、国営石油公社のペトロブラスの本社のほか、数千社ともいわれる多数の関連企業がある。そのため、州の財政は原油関連収入に大きく依存し、さながら「産油国」のような財政構造を有している。

つまり、2014年後半以降における原油価格の低迷長期化により、原油関連収入が縮小し、大幅な歳入減となっている。他方、ブラジルではルラ並びにルセフと2代続いた労働者党(PT)政権の下で低所得者給付をはじめとするバラ撒き政策が続いてきたことから、財政悪化に歯止めのかからない状況が続いてきた。

実際のところ、同州を巡っては昨年以来「非常事態宣言」にいつ追い込まれてもおかしくない状況が続いてきた。昨年春には料金滞納を理由に州庁舎の電話及びインターネット回線が数日間にわたって遮断される状況に陥った。年明け直後には州立病院において給与支払いの遅滞を理由に医師や看護師がストライキを行っていた。

さらに、足元においても公務員に対する給与は遅配、年金支払いも停止されており、国民生活にも直接悪影響が及ぶことが懸念されている。また、今年5月には同州が米州開発銀行(IDB)やフランス開発庁(AFD)に対する債務の利払いを行わなかったため、連邦政府が肩代わりする形で支払いを支援する事態となっていた。

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