前代未聞!オリンピック目前に非常事態宣言 ブラジル・リオ州財政危機で不安高まる
州政府はオリンピックとパラリンピックに際して警備などを担当することから、財政悪化による治安への影響が懸念されている。事実、6月19日には大会に際して観光客らの指定病院とされる公立病院が麻薬組織に襲撃され、患者に死者が発生するという事件も起きているほか、現地で強化練習に励んでいる選手が強盗被害に遭う事例も頻発しているようである。
こうした事情を勘案して、同州は「治安維持や保健・医療、教育、交通、環境面の運営が崩壊する」リスクがあるとして非常事態宣言に踏み切ったわけである。財政支援の要請を受けて、連邦政府は同州政府に対して、行政サービスの合理化をはじめとする非常措置の実施と引き換えに、29億レアル(約890億円)の緊急支援を実施することを決定した。
なお、緊急支援はオリンピック並びにパラリンピック開催中の警察活動や工事費用などに充てられる見通しであり、返済の必要はないとされることから、治安維持活動がストップするといった最悪の事態は避けられる模様である。
その一方、オリンピック並びにパラリンピック開催に関連する競技施設のほか、事業の運営についてはリオ州ではなくリオ市が管轄している。一連の決定を受けて、リオ市政府は同市が管轄する事業については、開会の直前に完工を予定している地下鉄の拡張工事を除いてほとんどがすでに終了しており、開催に向けた直接的な影響はないとの考えを示している。
ただし、地下鉄の拡張工事については費用の一部をリオ州も担っており、この費用負担を巡って連邦政府と州政府が別途協議を行っている模様で、この行方には引き続き注意が必要とみられる。
多くの州が財政危機、連邦政府も過去最大の赤字
ブラジルでは現在、財政状態が厳しいのはリオ州だけではなく、他の多くの州も同様の状況に陥っている。リオ州を巡っては上述のように、すでに国際金融機関からの債務返済が滞り、連邦政府が実質的な「肩代わり」をする事態に直面しているが、同州のみならず多くの州が連邦政府に対して債務返済を猶予するよう求める動きをみせている。
連邦政府と各州政府との間で交渉が行われた結果、州政府は向こう半年間について返済が猶予されるほか、その後1年半については返済額を軽減することで合意がなされている。
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