夏本番前に夏モノなくす「セール前倒し」の怪 三越伊勢丹のみ7月1日の一斉開始に異議

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経済産業省は、セールが始まらんとする6月17日に、「バーゲンで価格を下げて販売されることが常態となり、それが原価率の低下=品質の低下につながっている。こうした業界の慣行が消費者による正価への不信感を招き、正価販売比率のさらなる低下、消費意欲の減退につながっている」と業界の悪弊を指摘した報告書を出している。

ただ、こうした指摘は、百貨店にとって「今さらわかりきったこと」(業界関係者)。にも関わらず、本格的な夏が始まる前に夏物を安売りするという慣習はなぜ、「当たり前」となってしまったのだろうか。

背景にあるのは、セールの主役である衣料品の深刻な苦戦だ。根本には、日本人が洋服におカネをかけなくなってきているという問題がある。2人以上の世帯において衣料品にかけられたおカネは、2015年時点で1カ月平均約4500円と、1995年に比べて4割以上落ち込んだ(総務省統計局の家計調査)。

品ぞろえやブランドが同質化する悪循環

日本一の売り上げを誇る百貨店、伊勢丹新宿店。今年、出足は苦戦したが夏のセールでは健闘(撮影:今井康一)

それでも、ショッピングセンターに多く入る値頃なファストファッションや専門店ブランドの中には好調なところもある。一方で、百貨店の衣料品売上高は2年連続で下落(日本百貨店協会)。今年に入ってからはさらに落ち込みが激しくなり、6月は前年同月比で5.7%減少。ファッションに敏感な客が集まる伊勢丹新宿本店ですら、同約4%マイナスとなった。

カジュアルな装いが流行る中でコンサバティヴなデザインのブランドが多いことに加え、売れ筋商品に在庫を絞った結果、店頭の品ぞろえがブランドや店舗ごとに同質化してしまうという悪循環も打撃になっている。それにも関わらず、「メーカー側は商品を過剰に供給し、その結果として在庫を抱えすぎている」(百貨店業界に詳しい、オチ・マーケティングオフィス代表の生地雅之氏)。

三陽商会、オンワードホールディングス、ワールドなど主に百貨店向け衣料を手掛けるアパレルメーカーは、これまで夏のセールは三越伊勢丹の開始時期に合わせて開始時期を後ろ倒しにしてきた。しかし、今年からは3社ともに7月1日からの開始に切り替えた模様だ。「足元の苦戦を受けて、生産量の調整は進めているが、それでも在庫を整理する必要がある。7月中旬までセールを遅らせるだけの体力がない」(オンワード)。

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