「スペインよ、お前もか!」 高まる欧州リスク 景気・経済観測(欧州)

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万が一、首相の進退問題に発展し、議会の解散・総選挙に発展すれば、金融市場の混乱は避けられない。各種の世論調査では、野党第1党の社会労働党の支持率が伸び悩むなか、代わって支持を伸ばしているのは地方の自治権拡大を求める勢力だ。総選挙後は中央と地方の対立が一段と激化することや、何れの党も単独で過半数を獲得できないハング・パーラメント(宙ぶらりん議会)に陥る恐れがあり、政府の財政運営が行き詰まりかねない。

政治リスクの台頭で財政再建の遂行能力が疑われれば、国債市場での緊張の高まりや格付け機関による国債格下げのリスクも高まる。スペインの国債格付けは現在、投資適格級の最下位に位置しており、格下げされればジャンク債に転落する。そうなれば、年金基金など安定運用志向の投資家は国債を手放さざるを得なくなり、国債利回りには更なる上昇圧力が及ぶことになる。いかにドラギ・マジックが強力なバッファーとなっているからと言って、無風ではいられなくなる。

スペインの不正献金疑惑の真相は分からないが、政治リスクの行き着く先に危機再燃が待ち構えているとすれば油断はできない。

田中 理 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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たなか おさむ / Osamu Tanaka

慶応義塾大学卒。青山学院大学修士(経済学)、米バージニア大学修士(経済学・統計学)。日本総合研究所、日本経済研究センター、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)にて日、米、欧の経済分析を担当。2009年11月から第一生命経済研究所にて主に欧州経済を担当。

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