「スペインよ、お前もか!」 高まる欧州リスク 景気・経済観測(欧州)
一連の不正疑惑には既に検察当局も調査に動き始めている。不正の事実があったかどうかは筆者の知るところではないが、疑惑の発覚で世論の現政権批判が一層高まることは避けられない。ラホイ首相自身に司法捜査の手が及べば、首相の進退問題に発展する恐れがある。
政権批判の高まりでスペインの財政再建は一層困難に
財政危機の波及を恐れるラホイ政権は現在、戦後最大規模の財政緊縮に取り組んでいる。多くの国民は深刻な景気後退と20%を超える失業率に苦しんでいる。政府の度重なる緊縮要求に国民の不満が爆発し、各地で緊縮策に抗議するデモが頻発している。
また、一部の地方自治州の間で独立機運が高まっている。昨年秋に行われたカタルーニャとバスクの地方自治州の議会選挙では、いずれもスペインからの分離・独立を求める勢力が勝利した。なかでもカタルーニャ州では2014年中に独立の是非を問う住民投票を実施する方針だ。
スペインのGDPの5分の1を生み出す同州では、中央政府への多額の税収移転が州財政を圧迫していることに州民の不満が高まっている。同州首相が中央政府に税権限の一部委譲を求めたが認められず、住民投票の実施を目指して議会選挙の前倒しに踏み切った。ラホイ政権の進める緊縮策への不満が地方の独立心に火をつけた格好だ。
財政難に苦しむ地方自治州への財政支援は、政府の財政悪化の一因となっている。市場での資金調達から遮断された地方自治州の多くは、中央政府の監視下で厳しい財政再建に着手する代わりに、政府の流動性基金から資金支援を受けている。だが、中央政府の監視の目が十分に行き届いていないケースも目立ち、財政再建は計画通りに進んでいない。そこに今回の不正献金疑惑に起因した国民の政治不信が加われば、政府の財政再建はさらに困難になる恐れがある。
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