「ビッグ・ブラザー」のAI支配は危なすぎる 「パーソナルAI」は人工知能の民主化運動だ

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米倉:初期のころから考えはその方向でした。それが第二次AIブームが終わった時に不信感が出てきて、ユーザーの信頼がゼロになっていた。それが現時点で盛り上がってきて変わりつつあります。

もともとパーソナルコンピュータに期待していたのはこういうこと。僕がパソコンに求める役割はノートと同じで、インターネットはノートを運ぶ運送屋さんと変わらない。パソコンは入力端末、記憶端末としては優秀ですが、アウトプット端末としては不十分で、何かを表現してアウトプットするには、常に人間を介在しなければいけない。いまはまだそういうデバイスに止まっています。

仕事の移譲がパーソナルAIから始まる

米倉千貴(よねくら かずたか)/オルツ代表取締役。大学在学中から、メディアドゥに参加。2001年メディアドゥ取締役に就任。2004年に独立。2014年未来少年を年商15億円まで成長させた後に全事業をバイアウト。同年11月にal+(オルツ)を創業。「パーソナルAI」のジャンルで革新的な提案を行い、人工知能の明日を担う存在として注目されている

塩野:インプットするのは常に人間だと。

米倉:運搬して広める役割には向いているけれど、僕の代わりに、僕が入れたことに関して自動的にアウトプットするにはすごく向いていないですよね。

人間の脳みそに近い状態を模倣しているにもかかわらず、人間とPCの役割に差が生まれていて、パソコンは記憶端末であり、人間は入力者でありアウトプット者である状態が続いていますね。

塩野:現状は人間に意思決定が任されていますけど。

米倉:移譲の方法がパーソナルAIから始まるんではないかと感じているんです。よく話すのは、自分の子どもが大人になった時に、僕が子供のころワクワクしたこのキーボードというものをまだ触っているのが信じられない。PCとのつきあい方も、僕がめんどくさいなと思っている感覚を、子世代が同じように共有しているのはちょっと信じがたい。

塩野:未来から見たらみんな笑い話なんじゃないかと思うことは多いですよね。「昔は携帯にアンテナついてたよね」とか。

いまは人間がデータを与えて、AIが考え出します。データを変換するアルゴリズムをどうするかだと思うのですが、それについてのご意見は。

米倉:人の真似をさせることに集中させます。僕という一個人の真似ですね。アルゴリズムに一定の限定をかければ、その環境下で精度を高くできる。

チャットルーム内の僕の真似とか、メールの中で僕の真似をしてくれとか、あるいは誰々さんと僕とのあいだでのやり取りを真似するとか。

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