安倍首相に脱「オールド自民党」の覚悟はあるか 塩田潮の政治Live!

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本人は意識していないと思うが、安倍首相は「新記録づくり」が特徴だ。

2006年の1回目の政権到達の際は「戦後最年少」「戦後生まれ初」の首相だった。今度は「自民党発足後の初の2度目の首相』」という記録をつくった。首相経験者の政権再挑戦は1955年以後、79年の福田赳夫氏(国会での首相指名選挙)、94年の海部俊樹氏(同)、01年の橋本龍太郎氏(自民党総裁選)に続いて4人目だったが、初めて「2度目」を達成した。

07年の首相退陣後、健康回復とともに少しずつ再挑戦の意欲を膨らませていったが、返り咲きは「運」に助けられた面が大きい。永田町のウケはよかったのに、一般党員・党友の支持が乏しかった石原現環境相と、党員・党友の高人気の割りに、そっぽを向く国会議員が多かった石破現幹事長の間隙を縫って、思いがけず総裁選を制した。

総選挙でも「安倍ブーム」が起こったわけではないのに、民主党自滅の裏返しで政権奪還を果たした。

首相復帰後、アベノミクスで株高と円安を演出して人気を博し、内閣支持率も高水準で、好調なスタートだが、成功の秘密は徹底した民主党政権の逆張り戦法である。

経済軽視の民主党政権に対して「なんでもあり」の経済政策で、未熟政権との違いは「2度目の首相」の政権経験でという作戦だ。首相未経験の石破氏や石原氏にはできない芸当だろう。

だが、一つ大きな疑問が残る。

安倍首相はいま「脱民主党政権」に躍起だが、国民が一度、「ノー」と鉄槌を下した2009年までの「オールド自民党」を、3年4ヵ月の野党を経たいま、どう総括しているかだ。口では「ニュー自民党」を強調するが、野党転落以前の自民党政治を全面肯定して無批判的にその復活を目指すのであれば、早晩、化けの皮がはげるだろう。

「脱民主党政権」だけでなく、「政・官・業」癒着、派閥政治や世襲政治、密室裁量行政などの「オールド自民党政治」からの脱却・克服を目指す覚悟があるのかどうか。株高と円安を横目に、国民世論も市場も安倍首相の正体を見極めようとしている。

(撮影:尾形文繁)

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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