産まない決断をした49歳女性が悟ったこと 私は"私の人生の選択"をしただけである

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「結婚したらきちんと家庭を作ろう。息子にも理解してもらうし、君との子供が欲しいんだ」

普通であれば“家庭を作ろう”と言われることが嬉しいのだと思う。40代とは言え、周りに子供を産んでいる人はいるし妙な話ではない。しかし、彼は本当に自分との家庭を望んでいるようには感じなかった。それは彼の前妻が再婚することになった、という話を聞いたからだと思う。

前妻の再婚相手は優しく、息子とも仲良くやれているそうだ。彼はその話を寂しそうに私に聞かせた。そして彼が家庭を作りたいと言い出したのもその後から。きっと私とではなく、“寂しさ”から家庭を作りたいのだ。

寂しいという気持ちはよくわかる。私が彼と付き合うようになったのも、ひとりでいることにどこか寂しさがあったのかもしれない。だから、一緒にいることで幸せを感じられた。しかし、家庭を作りたいだけなら私ではない人がいいに決まっている。自分は子供を産むということから離脱した身だし、それはもう変えら れない。彼にはそのことをしっかりと説明した。

「君はどうしてそこまで頑固に、子供を産まないと決めつけるんだ? 雪乃だってお母さんから生まれてきたじゃないか」

確かに私は母が願って生まれてきた子供だ。あまり子供ができなかったという母にとって、私は宝物のように育てられた。こうして伸び伸びと生きているのも、 母がいたからというのは十分に理解している。しかし、だからといって“自分も産む”というのが当たり前の考えは、少し違う気がしている。

「母は子供を産んでほしいから自分を産んだわけではないし、わたしも産むために生まれてきたのではない」

と彼には自分の気持ちを伝えたが、もちろんわかったとすぐに納得できるはずがない。結局そのまま同棲は解消され、意見は交わることのないまま彼とは別れたのである。

45歳:母の言葉で再認識する、幸せのかたち

実家に戻ってから3年はひとり暮らしをする気になれなかった。結局は彼に理解してもらえず、このような結末を迎えたことが思っていたよりもショックだったのである。このままひとり暮らしを再会したら、寂しさに負けてしまいそうな気がした。

20、30代はひとりでいることが楽しかったのに、40代になってひとりでいることが耐えにくくなっていた。

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