産まない決断をした49歳女性が悟ったこと 私は"私の人生の選択"をしただけである

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そんな泣き言をいう私に、母は珍しく厳しいことを言ってくる。

「あなたが自分で決めた道でしょう。私もお父さんもいなくなったらどうするのよ」

一度は危ないと言われた母もあれから体調が良くなり、今では無理をせずマイペースに生活をしている。父も定年を迎え、夫婦水入らずの時間を過ごすことを考えているようだ。いまだに独身でいることを父と母はなにも言わない。「あなたは私に似てマイペースだから」と母は無理強いすることもしてこないのだ。

私はそんな母の本当の気持ちが知りたくなり、「このまま結婚もしないで、子供も産まない私をどう思ってるの?」といつもは聞かないようにしていることを聞いてしまった。20代のときは、そのままでいいと言ってくれたが、あのときはここまでひとりでいるとは思っていなかったはず。言わないだけで母には「子供を産んで欲しい」という気持ちがあるのではないかと思った。

そんな問いかけに母は「じゃあ私が結婚して孫を見せてと言ったら、雪乃はそうするの?」と聞いてきた。おそらく母にそのことを言われれば余計に悩み、勢いで結婚してしまうかもしれない。しかしそれでは、自分を理解していないと別れた彼と同じような決断である。

「見たくないと言えば嘘になるけど、子供ができにくいと言われた私にとっては、ここまで大きくなった娘がいるだけで満足よ。さらに欲を出したらバチが当たるかもしれない。あとは雪乃がちゃんと幸せになってくれれば、それでいいわ」

結婚や出産だけが幸せじゃないと言ったのはあなたでしょ、と言われ雪乃はハッと気づいた。20代のとき仕事に夢中になり、周りからは「女性の幸せを手放した」と言われたのである。そのとき幸せはこれだけじゃないと自分に言い聞かせて、ここまできた。

彼とのことであのときの気持ちを忘れてしまっていたが、それが全てではないことは自分がよく解っていたじゃないか。そのことにようやく気づいたとき、自分の体が軽くなっていった。

49歳:新しい場所で選んだ、ひとりの人生

その後、雪乃は実家を出ることを決意し、これまでとは違う場所に住むことにした。「四ツ谷」はそんな彼女が選んだ街である。

オフィス街ではあるが、意外にも住みやすい環境で新宿御苑にもほど近い場所にマンションを購入した。休日となれば御苑へ足を運んだり、近くのレストランへ飲みに行ったりする。新宿区は独身が多く住んでいるため、自分と似たような境遇の人も多い。

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