酒は大人の教養である―その6. 日本酒(前編)
みなさんは、いま、日本国内で飲まれている酒類のうち、日本酒の占める割合はどのくらいだと思われますか?
2012年2月、日本政策投資銀行新潟支店がまとめた「酒造業界の現状と将来展望(国内市場)」によると、2010年度の消費量の割合は、焼酎10.9% 、ビール32.7%、発泡酒・新ジャンル32.2%に対し、清酒はわずか6.6%。※日本酒の酒税法上の名称は「清酒」であるため、この項のみ清酒とします。
量的な面から見ても、1973年には1.421千kℓあったものが、2003年には601千kℓと、30年で半分以下になっています(平成17年2月 国税庁『酒のしおり』)。
グラス100杯のうち、5、6杯しか、自国の酒を飲まない国民なのですね、私たちは。
実は素晴らしい、日本酒のコストパフォーマンス。
日本酒シーズンの幕開けでもある、重陽の節句が近づいたある日。ヨーロッパの駐在員経験が長い、ある金融マンのお客さまと、日本酒の話をしていたときのことです。
「日本酒はね、安いんだよ」
(え?)と思いました。日本酒に対して、そんなイメージをもったことがなかったからです。
「ワインを例にとると、ちゃんと旨いワインを飲もうとすると、最低でも3,000円台。来客のときなど、確実に美味しいものをと思うと、5,000円は出さなきゃならない。量も1本720mℓしかない」
「でも、日本酒は、3,000円で、そこそこ旨いものが飲める。しかも、一升瓶で、1.8ℓも入ってる。わざわざ麹から作る、あんなに手間ひまのかかった酒が、こんな値段で飲めるなんて、世界の酒の相場から考えると、奇跡みたいなもんだ」
(なるほど)
海外でさまざまな接待の場をこなしてこられたであろう、氏の主張には説得力があり、それ以来、私も、日本酒に対して、違った角度から考えるようになりました。
日本酒は、高くない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら