債券投資家はなぜアベノミクスに踊らないか 市場動向を読む(債券・金利)
第3の矢の「成長戦略」について。具体策が決まるのは6月の予定なので、今はまだ評価できない。ただ、それがどのようなメニューであっても、期待される政策効果およびその波及経路は、(1)大胆な税制・規制・制度改革など→(2)企業のアニマル・スピリットの喚起→(3)生産・所得・支出の好循環メカニズム→(4)潜在成長率の引き上げ――で変わりはない。
成長戦略は新味なく、またも既得権益に阻まれる
その改革案の多くは歴代政権も掲げてきた積年の課題の焼き直しにとどまるだろう。しかも、改革は今次チャンスも残念ながら初期段階(1)で足踏みして、結局、掛け声倒れに終わってしまうのではないか。
焦点の実行力は、自民党政権の公共事業のバラまきによる利益誘導型政治の復活を見るに、はびこる既得権益や抵抗勢力、縦割り行政などの分厚い壁に阻まれそうだ。最終目標である“潜在成長率の引き上げ”には遠く及びそうにない。
ところで、長期金利の理論値は「期待潜在成長率」「期待インフレ率」「リスクプレミアム」という3要素で構成されている。
株式市場ではアベノミクス“期待”を背景に、文字どおり「期待成長率」と「期待インフレ率」が高まり、株価水準を大きく押し上げた。対照的に債券市場の期待は動かざること山の如し。安倍首相がアベノミクスという笛を吹き、株式市場はそれに乗って踊っているが、債券市場は踊っていない。大幅な株高にもかかわらず、長期金利がほとんど上がらないワケである。
今後を展望すると、アベノミクスが所期の効果を発揮するならば、それを織り込んでいる株高が裏付けられる一方、長期金利は水準訂正を迫られ、株高を追いかける格好で上昇するだろう。
逆に、アベノミクスの竜頭蛇尾が明らかになってくると、株式相場が失望感から急反落を強いられるだろう。ただし、それは債券市場にとっては読みどおりの結末だから、長期金利はそのとき、株安にもかかわらずさほど下がらないと予想される。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら