中国で失敗する日本人が理解していない本質 「人と組織の現地化」は簡単なようで奥が深い

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なぜかというと、私たち日本人は本社から送り込まれているので、どうしても本社側を見て仕事をしてしまうからです。たとえば、本社から幹部が来ると総出で対応していたり、本社への報告資料作りに追われていたりする。あるいは、現地トップが代わるたびにイチから説明を求められたり、日本人だけでしょっちゅう会議をしていたりする……。そういう現地で一緒に働く中国人社員は、「あの人はいずれ帰るし、それが繰り返されるだけ」と感じてしまうのも無理はありません。

この状態を解決するには、中国人社員の幹部登用を進めるしかありません。そして彼らと日本人社員が一緒になってこの会社を回していくのです。「この会社の運営はあなた方に任されている。日本人である私たちはそれを一生懸命サポートするよ」という姿勢が伝わるかどうかが、現地のビジネスの発展の鍵を握っています。

難しさは「心」の問題

しかし、人と組織の現地化に成功した日本企業でも、新たな悩みが浮上している例もあります。ある日本の大手電子機器メーカーは、この10年で、中国で大きな成功を収めました。副総経理以下、部長、課長に至るまで、ほぼ中国人の幹部で会社が運営されています。

一見理想的な状況ですが、トップの悩みは深いものがありました。

「組織の風通しが悪い」「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)が足りない」「情報がいろんなところで遮断されている」「悪い情報が下から上がってこない」

実際この会社では、こうした組織風土が原因で、法的なトラブルまで引き起こしてしまっているそうです。

原因は、「成功体験が悪さをしている」ことだと思います。

日本人も同じですが、中国人はヒエラルキーや階級を重んじます。当然悪い情報はあまり上に知られたくありません。そのうえ、力のある部長層は、過去の成功で自信を持っていますから、自分のところに情報を集めます。一方で、力のない部長は、部下に必要以上にソフトに接してしまい、部下から尊敬されなくなってしまいます。こうして、現地の中国人のマネジメントチームの力関係が複雑化し、日本人がどんどん蚊帳の外に置かれ、情報が届かなくなってしまったのです。

この例からわかるように、人と組織の現地化とは、単に中国人を幹部に登用すればいいのではありません。日本人が大切にしてきた思いを受け止め、腹を割って話せる関係を持てるリーダーを、いかに見つけ、育て、つなぎ留められるか――。これが人と組織の現地化のポイントだと思います。

大きな変化を迎えた中国で日本企業が勝ち残っていけるかどうかは、今後のグローバル経済の中で日本企業が成功できるかどうかの試金石です。ここで踏ん張って、この波をうまく乗り越えた企業だけが、グローバル企業の仲間入りを果たせるでしょう。

加島 禎二 セルム 社長

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1998年、創業3年目の株式会社セルムに参加し、2002年 取締役企画本部長に就任。今日では1000名を超えるコンサルタントネットワークの礎を築く。同社の常務取締役関西支社長を経て、2010年に社長に就任。一貫して「理念と戦略に同期した人材開発」を提唱し、次期経営人材の開発や人材開発体系の構築、リーダーシップ開発、組織開発などに携わる。升励銘企業管理諮詢(上海)有限公司 総経理を兼務。

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