中国経済にとらわれ過ぎると投資判断を誤る 先進国の需要回復で中国も上向く
中国経済が世界の投資家にとって注視すべき対象であることは言うまでもない。しかし、その減速や停滞ぶりについての昨年来の報道のされ方には少し違和感がある。率直に言えば「過剰反応」に見える。GDP成長率や消費などの統計が発表されるたび、中国景気の減速が原因となって日本経済に多大な悪影響が及んだり、「中国発の世界的な経済混乱」が起こったりするような報道が一部でなされている。だが、そういうとらえ方は正しいのだろうか。
中国の経済情勢は世界経済停滞の「結果」
今の中国の経済情勢は、世界経済を低迷させている「原因」というよりも、「結果」であると見たほうがいい。なぜなら中国は世界の「生産」拠点ではあるものの、「消費」地としての存在感はずっと小さいからだ。中国が弱いから世界が弱まるのではなく、世界の需要が弱いから中国の原油や鉄鉱石、石炭や電子部品などの需要が弱い、と考えるべきなのだ。
中国の最近の成長で大きな消費者層が生まれ、これが日本企業にもチャンスになったことは確かだ。だが、マクロ経済の観点から貿易統計を見直すと、いまだに貿易の内容は、日本から中国へは部品や機械の輸出、中国から日本には中国で生産された製品の輸入が大きな比率を占める。日本にとって中国は生産拠点であり、消費地ではないことがわかる。電気製品はその典型だ。これは日本だけでなく欧州や米国の中国貿易についてもあてはまる。単純に貿易量だけで中国市場の重要性を判断すると、実体から大きく乖離してしまう。
リーマンショック後、中国は世界経済の牽引役としての役割を果たした。世界の需要が低迷している時に計画経済的な成長率目標を達成するため、生産力を増やす投資を行った。米国などの需要回復が早ければこの投資は大成功となったに違いない。だが、残念ながら世界需要の回復はサイクル的に小休止した。結果、中国の生産力は過剰となった。
鉄鋼や造船などの生産能力の過剰があるのは、需要不足の中で投資を急いで調整を先送りしてきた結果と言える。2016年に入り、李克強首相を中心に過剰生産力削減を政策目標として走り始めたのは当然だ。しかし、だからこそ中国の成長率低下は政府によりコントロールされているといえる。ハードランディングの可能性は低い。
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