中国で失敗する日本人が理解していない本質 「人と組織の現地化」は簡単なようで奥が深い
では今、変わりゆく中国で、その波を乗り越えて、根をしっかり張ろうとしている日本企業は何に直面し、どう乗り越えようとしているのか。私が見ている限り3つのことがあるように思います。
中国に根付くことを決意した日系企業がやっていること
ひとつは、「商品開発のローカライズ」です。
ファーストリテイリングの柳井正社長は「世界にあるのはローカルマーケットだけ」だと言っています。
身近なところで考えれば、「爽健美茶」や「綾鷹」といった日本茶飲料を販売しているのはグローバル企業であるコカ・コーラ社です。日本の自動車メーカーの中で中国ナンバーワンのシェアを誇る、日産自動車(東風日産自動車)は、研究・開発や人材育成を専門に手掛ける、総面積8万6000平方メートルにも及ぶ施設を2016年6月に完成させました。中国の消費者にマッチした商品を開発するとともに、それを通じて、中国で日産ブランドを守り、進化させることができる人材を育成し、企業文化を強くしていこうとしているのだと思います。
その地域にあった商品を、その地域「発」で開発し販売できることが、グローバル企業の力量なのです。
2つ目は、「自社の強みの再定義」です。
中国に進出して20年たった、ある日本の損害保険会社が今、これまでの日系企業だけでなく、中国企業や中国人ユーザーにビジネスを広げようとしています。それにあたって、同社では「自社の差別化ポイントは何であるか」を徹底的に中国で話し合い、研究したそうです。そして出した結論は「人性化(れんしんほぁ)」という、これまで日本で行ってきた「真心をこめたサービス」を突き詰めることこそ、中国における激しい競争に勝つ土台なのだ、ということでした。
日本が誇る一流企業も、中国に来れば数ある中の1社にすぎません。埋もれないようにするためには、自社の存在意義を研ぎ澄ましていかないと生き残っていけないということだと思います。
3つ目は、「人と組織の現地化を、粘り強く行う」ことです。
私はこれが、長い目で見るといちばん大事だと思っています。中国に限らず、海外でビジネスを成功させるには、現地の人材を「わが社の大切な財産」として平等に扱い、活躍してもらうことが何よりも重要です。
ただ、それはなかなか難しいのです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら