ムーギー:私からすると、結構ずっと前から日本は仕事を失い続けているという印象ですけれど、その深刻度が高まっているんでしょうね。
最近、外資系投資銀行では、1年目の社員を全員クビにしたり、部門ごと閉鎖したりするという例が相次いでいるんですよ。部門ごと香港やシンガポールの本部に移転するというケースが多い中で、日本にあった仕事が海外に出て行ってしまっている。
その流れで、日本オフィスの採用も昔とは変わってきている。一昔前は、日本オフィスの採用は、日本方式で日本の大学から採っていたわけですが、ここ数年は、ずっと海外に行っていた人や、中国人、インド人を採用する例が増えている。
最近、話を聞いた投資銀行の人は、新卒採用の7人のうち、4人はボストンキャリアフォーラム(米ボストンで開かれる日英バイリンガル向けの就職イベント)で採用した、と言っていましたよ。つまり、日本から仕事が出ていくのみならず、日本のオフィスで雇っている人たちも、半分ぐらいが帰国子女や外国人でないと、やっていけなくなってしまっている。
その意味で、日本国内だけでキャリアを築くことのリスクは非常に大きい。P&Gはアジアの本部を神戸からシンガポールに移しましたし、三菱商事も金属販売部門の本社をシンガポールに移管することを決めましたよね。
花形部門がどんどん減っていく中で、日本の経営者は、結構社会主義的というか、お国のためみたいなところがあって、「できれば日本の中で雇用を持ちたい」という思いが強い。ただ、最近はちょっと円安傾向ではありますが、昨年のような為替水準が今後戻り継続するなら、いくらお国のためでも、工場は日本から海外に流出していかざるをえない。日本の中だけでやってきた人たちにとっては、ますます将来が厳しいですよね。
本当のブラック企業とは?
城:何ていうのかな、これは全年代にいえるんだろうけど、とくに30代後半ぐらいの間で、いい波に乗れた人と、取り残されてしまった人の二極化が、今すごく出てきている気がしますよね。
先ほど、SEの話をしましたけど、バブル世代だけでなく、30代後半の世代もリストラのターゲットになり始めている。20代はまだ社内で潰しが効くのでいいんだけれども、35歳を越えてしまうと、やっぱりちょっと苦しい。
この対談では、ムーギーさんがグローバルな話をして、僕が国内の話をするという分担だと思うんだけど、グローバルに働くのも、日本国内で新しいエリートとして生きていくのも、たぶん本質的な違いはないと思う。むしろ、違いがあったら、おかしいんですよ。
これからの時代を考えるときに、何が一番大事かというと、答えはすごくシンプル。昔から言われていることなんだけど、「自分でやる」ということに尽きると思うんですよね。
たとえば今、ユニクロが一部ですごくたたかれている。ユニクロはブラック企業(編集部注:一般的に、労働環境が悪く、若者を使い捨てる企業を意味する)だと言う人もいるんだけれども、僕はブラックではないと思っている。ユニクロはたぶんグローバル企業なんですよ。
グローバル企業は、ユニクロに限らず、どこもハードに働かされるんですよ。社員が責任取らなくてよくて、高度成長期にできた法律を全部守ってもらえて、おまけにマイホーム買えるくらいの給料に自動的に上がっていくような会社は、たぶん下請けと外注で相当泣いてる奴がいると思う(笑)。そっちの方が本当のブラックだと思いますよ。
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