手足を切るような”大リストラ”が始まる 城繁幸氏と考える「日本に依存しないキャリア」(上)

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ムーギー:というか、資本主義である以上、そうならざるを得ないですよね。つまり、資本のリターンを高めるためには、いい商品を安い価格で提供して、消費者を満足させるしかない。そのためには、労働者は限界まで絞られることになってしまう。

この文脈で、貧富の差を拡大した象徴的存在のようにユニクロが誤解されてしまうことが多いです。ユニクロがなかった時代は、京都の片田舎でも、衣服は近所の小さいパパママショップで買っていたわけです。ちょっと高かったり、品質が悪かったりしても、ほかに行くところないからそこで買うしかないわけですよね。

でも、ユニクロが全国にできちゃうと、そういうパパママショップが全部マーケットから駆逐されてしまう。それは、安くていいものが気軽に買えるのだから、消費者にとってはありがたいですよね。ただ、マーケットが非効率なおかげで食ってきたパパママショップの人たちは、先祖代々50年くらい衣服を売ってきたのに、仕事がなくなってしまう。今さら職業訓練所に行ってトレーニングを受けても、現実として、新しい仕事なんてできるわけがない。

こうした話は、消費者にとってはありがたいんですけど、仕事という意味では、どうしても特定の層の失業者を増加させてしまいますよね。市場の非効率さが担ってきた所得分配機能が失われていくのは確かです。

ただしこれは、ユニクロがなければ市場を開放したときに外国のリテールチェーンに同じことをされるだけなので、世界のアパレル市場に新たなスタンダードを打ち立て、ジャパンブランドとして活躍しているユニクロは、仕事を失う人が一部いても、他方、大量の雇用機会を若者に提供してくれているので、全体的には日本にとってありがたい存在なのは間違いないと思いますけどね。海外にも積極に出て行って、日本の若者にグローバルに働く機会も提供してくれていますし。

:ユニクロがブラックと言っている人たちに対して、いつも疑問に思うんだけども、彼らは突き詰めると、「使い捨てられる」ということを問題視するわけです。でも、労働者って全部使い捨てですよ。これは、政治家から、首相から、銀行員から、メーカーまで、みんなそうですよ。

すべての労働者には2種類しかいない。使い捨てられることを分かっている労働者と、使い捨てられることに気付いていない労働者。大企業で幸せな定年を迎えられたオジサンも、僕に言わせれば、使い捨てられたことに気付いていないだけ。ただね、これは労働者の側から見て凄いメリットでもある。会社もやっぱり使い捨てってことですよ。なら個人の側もドライに、いかに成長できるかを考えればいい。

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