トヨタがスポーツカーに注力する新たな事情 「86(ハチロク)」を改良、レースの経験を反映

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トヨタは2010年以降、「G’s(ジーズ)」という名称で、ミニバンの「ノア/ヴォクシー」から「ヴィッツ」といった「アクア」小型車までスポーツ仕様のラインナップを拡大している。

最上位モデルより30~40万円高いが、ボディ剛性を上げたり、スポーツタイヤを装着するなど走行性能を向上させている。乗車人数や積載容量などからスポーツカーは選べないが、運転をより楽しみたいというニーズに応えようとしている。

車のコモデティ化に危機感

近年のトヨタはレースにも力を入れており、得られたノウハウをスポーツカーだけではなく、量販車種にもフィードバックしようとしている(写真は2012年にニュルブルクリンク24時間耐久レースに出場した86)

自動運転やカーシェアリングが普及すると、車はコモディティ化していくと言われている。単なる移動手段としての車しか作れなければ、自動車メーカーが得られる付加価値は激減しかねない。車好きの心を動かす車を生み出していく必要がある。

グループで年間約1000万台を販売するトヨタにとって、台数のことだけを考えれば、わずかな割合でしかない86やG’sに力を入れるのはこうした理由がある。

「スポーツカーは、カルチャーです」

これは、2012年、86が初お目見えした時のキャッチコピーだ。まだ「スポーツカーが文化になった」とは言い切れない状況ではあるが、4年前に比べると着実に前進していることは間違いない。

(写真:記者撮影)

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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