関西経済はどこで「強み」を発揮できるのか どないやねん?ポスト橋下の大阪・関西

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では、これらのビジネスチャンスを、どうしたら実際の成果につなげていくことができるだろうか。もちろん唯一絶対の成功法則など存在しない。しかしながら、一つの重要なポイントは、関係者すべてによる方向性の共有と、それぞれの持ち場における取り組みを積み上げていくことだ。

たとえば、インバウンドを例にとってみよう。中には「たまたま、アジアの途上国に日本ブームが来た恩恵を、大阪も受けているだけ」という声もある。事実は違う。外国人旅行客の多くが、大阪城を訪れ、そこから船に乗って、淀屋橋や中之島まで水辺から大阪の街をみて楽しむ。15年前であれば、大阪城から中之島につながる大川のまわりの公園にはブルーシートがかかり、とても遊覧船に乗る気分にはならなかったはずだ。

関空はビックプッシュの典型だ

平成13年12月、内閣官房都市再生本部の都市再生プロジェクトに決定され、都市再生緊急整備地域の指定を受け、国や府・市町村、関係機関、民間が連携しながら、「水の都大阪の再生」に取り組んだ。それにより、大阪の水辺の景色が一変したのだ。

上記は一例でしかない。現状の大阪のインバウンドの活況の背景には、大阪府市をはじめとする地方自治体、関西広域連合、大阪観光局、関経連、関西経済同友会、京阪神の商工会議所、各企業などが、それぞれの立場で尽力してきた取り組みがある。

何より忘れてはならないのは、関西国際空港の存在である。紆余曲折を経ながら1994年に開港したが、その後20年間、借金は一向に減らず、国際的な競争力もなく、「困った存在」だった関空。しかしながら、もし、関空がなかったら、この2013年以降のインバウンド活況から、関西全体が蚊帳の外になっていた可能性もある。関空の存在自体が、関西経済がインバウンド産業を迎え入れるための「ビックプッシュ(大きな一押し)だった」と言えるのではないだろうか。

次回は、関西経済が積極的に取り組むべき領域、これから必要となるビックプッシュの方向性を考えていきたい。

稲垣 公雄 三菱総合研究所関西センター長

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いながき きみお / Kimio Inagaki

三菱総合研究所主席研究員。滋賀県出身、京都大学経済学部卒。三菱総合研究所入社後、民間企業向けコンサルティングに従事。2013年より現職。

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