客足が絶えない名物商店街の「尖った思想」 チェーン店を蹴散らす「すごい個性」
同商店街は2014年度、中小企業庁認定する「がんばる商店街30選」に大阪府内で唯一選ばれた。近辺には「ライフ」「izumiya」など大手資本のスーパーが乱立する立地ながら、あっと驚く手法で人を集めてきた。
同商店街組合の理事長を務める江藤明氏は、当時を振り返る。「私が理事に就任したのが、2013年。当時、近所に大型のスーパーが4件できて、『何とかせな、このまま先細っていくのを待つだけや』という強い危機感がありました」
もともと地域密着型で、目玉となるような資源もない。「であれば、何か仕掛けづくりが必要だ」。そう考え、大阪商工会議所と、広告代理店・電通の協力のもと、2014年に商店街全域を使った「ポスター総選挙」の実施に踏み出した。
内容は、電通の若手コピーライター、デザイナー計20人が、商店街内の計60店舗のポスターを制作し、来場者の投票で順位をつけるというものだ。
「果たしてポスターで集客につながるのか?」という周囲の不安を尻目に、ポスター展には3000票以上の表が集まり、新聞、テレビなどの各メディアからの取材依頼が舞い込んだ。
「東京や、四国など全国各地から、たくさんの観光客が来てくれました。美大生や、若い女性、台湾、北京など海外からの観光客と、今までとは違う層の方も目立ちましたね。中でも大きかったのが、メディア露出が増え、商店街の知名度が格段に上がったこと。『あのポスター展の商店街ね』という認識を持ってもらえるようになりました」
本当の課題は集客に成功した後に見えてくる
ポスター展は2013年末に終了したが、しばらくはその余波が続いた。電通のクリエーターたちが手掛けるポスターのクオリティは高く、それ見たさに1年半ほどは海外、遠方からの旅行者が訪れたという。ただ一方では、非日常的な派手な仕掛けで客寄せに成功したゆえの大きな課題もあった。
「私たちの商店街は、基本的には生活必需品の販売がメイン。各店の売り上げがどんどん増えているという状況にはなってはいません。なので、今後も近隣の銀行と連携して商店街加盟店ならどこでも使える通貨『りぼんSTAMP』の推進、月に1度決まった商品がワンコインで買える『100円商店街』などの企画を積極的に行い、人を呼びこんでいきたいと思います」(前出・江藤氏)
同商店街は、「文の里放送局」という商店街の情報を伝えるラジオ番組をスタートさせるなど、新たな試みも積極的に仕掛けている。
今後、生き残りをかけて、後継者問題、集客問題、テナント誘致などあらゆる問題と向き合っていく必要が出てくるであろう全国の商店街。今回紹介した2つの事例は成功への道のりはまったく違うが、問題意識の持ち方やその意気込みには共通する点も感じた。そこには、人集めに苦戦する多くの商店街が元気を取り戻すためのヒントが多く明示されている気がする。
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