親の離婚を子が「消化する」ための絶対条件 面会交流の現場で置き去りにされがちな視点

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「ウィーズ」副理事長の光本歩(みつもと・あゆみ)さん

実は、光本さん自身も離婚家庭に育ち「フィルターを通さずに親を見る」ことの大切さを、身を持って経験し、大人になったと打ち明けます。

母親が父親の名前で家族に内緒で借金をしたため、父と妹と3人で父の姉のもとへ夜逃げ。父に育てられた光本さんは、学校に行くのも大変な経済状態の中、アルバイトをしておカネを貯め、母親に会いに行きました。

借金をつくった母親だけれど、今も自分を思いながら、どこかで苦労しながら生きているはずだ……。しかし夜行バスでようやく会いに行くと、母は、彼氏同伴で楽しそう。光本さんはハッとしました。母に抱いていた幻想は消え、自分の中で折り合いがついたと言います。

「あのまま会っていなければ、母は美化されていた。実際に会うことで母の良いところも悪いところも受け入れられるようになりました。この体験を通じて、自分と母を切り離せたんです」(光本さん)

親の離婚を「消化できない」子どもに待っている苦難

面会交流をある程度順調に続けていると、子どもの内面にも変化が生まれるそうです。子どもが自分自身の目で「親はこういう人だ」と理解する過程で、親の離婚を受け入れて「消化する」のです。

一方で、面会交流が実現しなかったり、途中で途絶えてしまったりすると、子どもは同居する親のフィルターでしか別居する親を認識しないので、親の離婚を消化しきれないことがあります。こうなると、共依存を抱えたり、健康的な結婚観を持てなかったり、自分自身の離婚につながったりと、子どもの成長過程に影響を及ぼすことが少なくありません。

そして、子どもが親の離婚を消化するためには、当事者である親同士が、自分たちの離婚を消化していることが前提になります。

「戸籍上の離婚をしているだけではなく、情緒的に離婚しているかどうか。未練や怒り、悲しみを捨て『すべて終わったことだ』と消化している両親のもとでは、元夫婦間の関係と親子の関係を切り離して考えることができているため、面会交流もうまくいきます。しかし現実には、相手に執着してしまっているケースが多い。面会交流を仲介するだけでは解決できない問題も多いんです」(光本さん)

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