極論すると今は「革命前夜」なのかもしれない 非エリート階層が英国EU離脱で気づいたこと

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では「非エリート」は仕事を失うことを恐れて、現状を肯定するのが正しかったのだろうか。それとも、「離脱」を選択することで、「エリート」達にひと泡吹かせるのが正しかったのであろうか。どちらを選んでも生活が苦しいのであれば、「離脱」を選択し、エスタブリッシュメント(既存の支配勢力)を驚かせるほうが正しかったのではないだろうか。少なくとも、「こっち側を見ろ」というメッセージは出せた。

極端なことを言えば、今は「革命前夜」なのだ。かつてのように武力で政治体制を変える必要はなく、民主的な投票で政治体制を変えることが出来るのだが、「非エリート」は自らの力で政治を変えることが出来るということがわかってしまった。

この勢いは、他の国々へも伝播するだろう。そういう状況なのに、「情弱は経済を理解してないから、自らの首を絞める選択をした」という「エリート」の言い方は、「パンがなければケーキを食べればいい」(マリー・アントワネット、諸説あり)という言葉と同じように、筆者には聞こえてくる。

英国は「離脱」しても没落しない

英国は中長期的に「離脱」によって没落することは考えにくい。確かにフリーな欧州市場へのアクセスがなくなることは痛いが、それだけで競争力がなくなるわけではない。

特に金融ビジネスにおいて、シティが現在の地位を失うことはないだろう。シティは一朝一夕に現在の地位を築いたわけではなく、人材の厚み、法的な整備、英語圏であること、欧州以外にも中東やロシアなどの巨額マネーを持つ顧客が近くにあることなど、様々な要因、歴史的経緯から金融拠点となった。今回も、他の欧州の拠点にセールスがある程度移動すれば済む問題ではないだろうか。逆に、欧州の金融機関がロンドンへのアクセスを失うとなれば、それこそ一大事だ。

現在の欧州を見ると、ギリシャをはじめ、ポルトガル、スペイン、イタリアといった問題国がEU内にある一方、一人あたりのGDPが世界最高水準であるスイスやノルウェーがEUやユーロにも参加してないという事実がある。経済統合すればするほど良いということでもない。ブラッセル(EUの拠点都市ブリュッセル)の官僚支配を逃れ、英国がより一層金融に特化したり、中国やインドといった新しい経済主体との結びつきを深めたりといったことが可能になって来るのではないだろうか。

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