アップルが大量の「自社株買い」に走る理由 米企業の自社株買いは今年4500億ドルにも
2016年1〜3月期はギリアド・サイエンシズの後塵を拝したとはいえ、アップルはしばらく前から自社株買いの誰もが認める「王者」だった。今年3月までの12カ月間でアップルが自社株買いに投じた資金は3680億ドルで、2位のマイクロソフト(1660億ドル)の2倍以上だった。3月までの5年間で見ると、アップルが購入した自社株は計1兆1660億ドルに相当し、2位のマイクロソフトは4570億ドル、ファイザーは4490億ドル、オラクルは4370億ドルだった。
最近の自社株買いの急増の引き金を引いたのは、今年の初めに急落した株式市場だったかもしれない。シルバーブラットは、1〜3月期に「自社株買いのペースが上がった要因の1つは、年初の株価下落で自社株を買い支えようとした企業だった」と語る。この1〜3月期、S&P500を構成する企業の5社に3社以上が額の多寡はあれ、自社株買いを行った。12カ月間に株式の数が4%以上減った企業は139社に上る。
株式が4%減れば、EPSは4%増える計算だ。それに短期的には株価を押し上げる要因となることが多い。
自社こそが「もっとも頼りになる株主」
自社株買いは株式市場において重要な役割を果たしている。ゴールドマン・サックスが主に連邦準備制度理事会(FRB)のデータを元に分析を行ったレポートによれば、アップルのような自社株買いに積極的な企業にとり、自社こそが最も頼りになる株主だ。自社株に多額の資金を投じることで、企業はミューチュアルファンドや年金基金、外国人投資家や個人投資家の株式投資への需要が減った分を穴埋めしている。FRBによれば1〜3月期、米株式市場からそうした資金が流出したことを示すデータもある。だが企業が自社株買いをする際には現金の流入が起き、株価を下支えする効果を生んでいる。
ゴールドマン・サックスが今年後半の株式市場に対し楽観的な見通しをしているのも、主に自社株買いのおかげだ。
「自社株買いの総計は今年、4500億ドルに達して米国内の株式需要の最大の要因になるというのがわが社の予測だ」とゴールドマンは述べている。