アップルが大量の「自社株買い」に走る理由 米企業の自社株買いは今年4500億ドルにも

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今年3月までの12カ月間でアップルが自社株買いに投じた資金は3680億ドルに上る(写真:ロイター/Daivd Gray)

iPhoneの売上高が減少するなか、アップルは世界第2位の市場である中国でもトラブルに見舞われている。かつては高値で推移したアップル株も今年に入って買いたたかれており、同社の苦境が株式市場全体の足を引っ張る結果となっている。

だが、アップルを初めとする米国企業がかつてないほどのペースで自社株買いに励んでいなければ、アップルと株式市場はさらに困った状況に追い込まれていたかも知れない。

多くの米企業が自社株買いに意欲的

もっとも一般的に言えば、自社株買いのために現金を使うことには経営を改善する効果も、企業の本源的価値を高める効果もないことは多くの研究で明らかになっている。だが他に現金のいい使い道がない場合には、金食い虫のプロジェクトにへたに手を出すよりは自社株買いをするほうがはるかにましだ。

それに、自社株買いをすれば市場に出回る株式の数が減り、1株あたり利益(EPS)も改善される。経営幹部が高い報酬を得るために必要な業績目標を達成しやすくなり、短期的に株価を押し上げることが多いから一般の株主にとっても利益になる。

現時点で、米国の大企業は手元資金が豊富だ。多くの会社が大規模な自社株買いにその資金を注ぎ込んでいる。利益が下がっている中でも、その傾向はさらに強まった。今年3月までの12カ月間で、S&P500を構成する企業の営業利益は9890億ドルから8549億ドルに減少したのに、自社株買いは5381億ドルから5890億ドルに増加した。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのシニアインデックスアナリスト、ハワード・シルバーブラットのレポートによれば、12カ月間の伸びとしては過去最大だという。

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