共産党「人殺し予算」発言のボディーブロー 辞任をしてもダメージは消えそうにない
「今回の藤野氏の発言は、党の方針と矛盾する」――。藤野氏の辞任にともない政策委員会代行を兼任することになった小池氏はこう述べた。
しかし小池氏は「災害支援活動は大きな役割を果たしている」と自衛隊への評価を装いつつも、「自衛隊は違憲だという党の立場は変わらない」と言明。さらに「急迫不正の侵害や大災害があった場合には、自衛隊には働いてもらう」と述べたのだ。
こうした理屈は自民党にとって、格好の批判の材料になった。安倍首相は「『お前は憲法違反だ』と言って存在を否定しつつも、大災害には出動させ、急迫不正の問題が発生すれば命をかけろというのでは、あまりに自衛隊に気の毒だ」と応援演説する度に強調している。
そもそもなぜ“防衛”という言葉から“殺人”が結び付いたのか。藤野氏からは「言葉足らずだった」とする以外の具体的な説明は聞かれなかった。しかし2011年3月に発生した東日本大震災で活躍して以来、自衛隊は危険をかえりみず、救難に勤しむ存在だと一般的に認知されている。ましてや福岡県出身の藤野氏なら、4月に起こった大地震で被災した同じ九州の熊本県や大分県に自衛隊が派遣され、懸命な被災地支援が行われていた実態を十分知り得ていたはずだ。
あくまでも参院選対策
むしろ今回の政策委員長辞任の理由は、もっぱら参院選対策に尽きるのではないか。26日の「防衛費は殺人予算」発言以来、共産党本部や藤野氏の事務所には多数の苦情が寄せられた。中には強く議員辞職を迫るものまであったと、藤野氏自身が辞任会見で明らかにしている。
こうした国民の強い反発に、藤野氏をこのまま政策委員長として留めておけば選挙で不利になると指導部は読んだのだろう。実際に、埼玉、神奈川、愛知、大阪の各選挙区の共産党候補は当落線上にいる。「これで50万の比例票が共産党から消えた」などという話も飛んだ。さらに青森や岩手、新潟、山梨、愛媛、大分などの1人区では、自民党と野党統一候補が大接戦を繰り広げている。問題を早く終息させないと、今後の選挙戦の展開に大きなダメージを与えかねない。
2013年の参院選、2014年の衆院選で党勢を伸ばした共産党は、思わぬところで綻びを見せてしまった。うまくこれを乗り切れるのか。政界に吹く風は一瞬のうちにその方向を変えるということを、各政党関係者は忘れてはならない。
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