厚労省が敗北、医薬品ネット販売裁判の意味 ケンコーコムは事業を即時再開

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省令公布後のパブリックコメントには「ネットは店頭より品ぞろえが豊富で重宝していたのに」など、主婦や高齢者から反対意見が殺到。さらに、この規制を不服として、ネット通販会社のケンコーコムとウェルネットは国を相手取り東京地方裁判所に提訴した。

10年3月に下された判決では、「店頭とネットには情報提供において優位な差がある」として原告側が敗訴。しかし今年4月、風向きが大きく変わる。東京高等裁判所で争われていた控訴審で、両社のネット通販再開を認める逆転判決が下された。医薬品販売において、ネット販売に特有の危険性が認められなかったことが決めてとなった。最高裁の判断も、ほぼ高裁判決を踏襲する形だった。

現行省令は実質無効に

今回の判決は、原告であるケンコーコムとウェルネットのみにネット販売の権利を認めるという形態になっているが、この判例で実質的に同省令の効力はなくなった。厚労省は今後、対面、ネットなど販売手段で分ける規制ではなく、情報提供の在り方など販売方法の要件を示す新たな省令を作成する見通しだ。

判決を受けて会見したケンコーコムの後藤玄利社長(中央)ら原告団

ただ、現行の省令が実質無効になった以上、原告の2社以外にも新省令の施行を待たずに医薬品ネット販売を拡大する業者が出てくる可能性がある。ドラッグストア各社も自社EC(電子商取引)サイトの拡充を進め、解禁に向けた準備を進めてきた。

現段階ではおむつや飲料水など、店から持ち帰るのに不便な商材を売りに顧客を囲い込もうとする例が大半だが、今回の最高裁判決を受け、第2類以上の医薬品の販売に乗り出す業者も出てくる可能性がある。市場が拡大する一方、競争も激化しそう。ケンコーコムにとっては正念場にもなる。

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