50歳、無職、アフロ女子の「おカネがない快感」 稲垣えみ子・セドラチェク ミニマリスト対談

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

セドラチェク:『指輪物語』のようなホビット(小柄な妖精)の世界です。ちなみに『指輪物語』には、「おカネ」が出てきません。売ったり買ったり、という場面がないんです。大切なものは、贈られるか、見つかるか、盗むんです。

稲垣:盗むんだ!(笑) ところでチェコの方は皆、セドラチェクさんみたいに質素なんですか? 日本に来られたときに、とても荷物が少なかったと聞きましたが。

セドラチェク:冒険的でないのは確かです。チェコ人はとにかくユーモアが好きですね。私はよく自虐的なことを言ったりします。

稲垣:自分を笑うと。

セドラチェク:自分を笑うのは当然で、自分の愛するものすべてを笑いにします。外国の方から、よく、「社会主義時代のチェコは暗かった」と言われるのですが、そんなことはないんです。

たとえば家では、米国とかヨーロッパのラジオなんかを密かに聞いていて、学校で言われることと、うちで話していることは違うというのはわかっていました。で、自分が偽善者にならないために、笑いでもってそれを乗り越える。

稲垣:やっぱり、おカネだけじゃないんだ! 笑いがパワーになる、ということですよね。

ヒトラーはチェコ人を「笑える野獣」と呼んだ

セドラチェク:チェコはヨーロッパのど真ん中にあって、右にロシア、左にドイツがあるのですが、1621年以降、自ら戦争を起こしたことがないんです。第2次大戦中はドイツに占領されてしまうのですが、それでも笑う。それでヒトラーはチェコ人のことを、「笑える野獣」と呼んだ。

稲垣:それは最大級の賛辞ですね。

セドラチェク:笑いは、「静かなる抵抗」という意味もあって、武力で全面戦争してもしょうがないと。

稲垣:面白いですね。多くの人は、おカネがパワーだと思っていますけど、今のお話は、笑いをパワーにするということですね。そういうパワーがたくさんあると、世の中が、経済がもっと自由というか、豊かになる気がしました。

稲垣 えみ子 フリーランサー

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いながき えみこ / Emiko Inagaki

1965年生まれ。一橋大を卒業後、朝日新聞社に入社し、大阪社会部、週刊朝日編集部などを経て論説委員、編集委員をつとめる。東日本大震災を機に始めた超節電生活などを綴ったアフロヘアーの写真入りコラムが注目を集め、「報道ステーション」「情熱大陸」などのテレビ番組に出演するが、2016年に50歳で退社。以後は築50年のワンルームマンションで、夫なし・冷蔵庫なし・定職なしの「楽しく閉じていく人生」を追求中。著書に『魂の退社』『人生はどこでもドア』(以上、東洋経済新報社)「もうレシピ本はいらない」(マガジンハウス)など。

この著者の記事一覧はこちら
トーマス・セドラチェク 経済学者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

Tomas Sedlacek

1977年生まれ。チェコ共和国の経済学者。同国が運営する最大の商業銀行の一つであるCSOBで、マクロ経済担当のチーフストラテジストを務める。チェコ共和国国家経済会議の前メンバー。「ドイツ語圏最古の大学」と言われるプラハ・カレル大学在学中の24歳のときに、初代大統領ヴァーツラフ・ハヴェルの経済アドバイザーとなる。2006年には、イェール大学の学生らが発行している「イェール・エコノミック・レビュー」で注目株の経済学者5人のうちのひとりに選ばれた。『善と悪の経済学』はチェコでベストセラーとなり、刊行後すぐに15の言語に翻訳された。2012年にはドイツのベスト経済書賞(フランクフルト・ブックフェア)を受賞。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事