50歳、無職、アフロ女子の「おカネがない快感」 稲垣えみ子・セドラチェク ミニマリスト対談

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セドラチェク:稲垣さんとは話が合うと思ったら、好きな映画が私とカブってる!(笑)

私はよく、UFOからわれわれを見たら、という話をします。UFOからわれわれを見たら、実はおカネというものは見えないんじゃないか。たとえばレストランに行って、レストランの人が食事を「はい、どうぞ」と言って出してくれて、お客のほうは、それを食べて「ありがとう」と言って帰る。UFOからは、それだけの行為に見えるでしょう。おカネは見えない。

稲垣:確かに宇宙人には何の価値もない紙切れにしか見えないですもんね。

セドラチェク:典型的には、たとえばSuicaのようなカードで改札機をピッと通過するときには、硬貨とか紙幣は必要ない。ただ通ろうとしたらピッとなって、まるで『スター・ウォーズ』の……。

稲垣:フォースだ(笑)。

セドラチェク:そうなんです。紙幣はいまやおカネの数%にしかすぎなくて、ほとんどは、デジタル化されたもの。非常にスピリチュアル、空想的なんです。

稲垣:わかる、わかる! 電子マネーのニュースなんかを見ていると、おカネって実はなんのリアリティもない存在で、ただみんなの「こうあってほしい」というごちゃごちゃの欲望の集積じゃないかと思うことがあります。

セドラチェク:それからおカネは、言葉と同じで、相手があって成り立つツール。自分が持っているおカネは、自分に対しては支払わないですよね。会話も、ひとりでは成り立たない。そう考えると、おカネは、なにかとの関係によりできたものだということです。そして、おカネは信仰でもある。信じなければ……。

稲垣:ないのと同じですね。

セドラチェク:そうです。

おカネに頼らず経済を回す

トーマス・セドラチェク/1977年生まれ。チェコ共和国の経済学者。同国が運営する最大の商業銀行のひとつであるCSOBで、マクロ経済担当のチーフストラテジストを務める。チェコ共和国国家経済会議の前メンバー。「ドイツ語圏最古の大学」と言われるプラハ・カレル大学在学中の24歳のときに、初代大統領ヴァーツラフ・ハヴェルの経済アドバイザーとなる

セドラチェク:チェコでは、たとえば私が引っ越しをしたときに、友だちに手伝ってもらったら、お礼にお酒をおごったりします。おカネを包んだりはしません。

稲垣:それは、逆に失礼、ということですか?

セドラチェク:そう、私たちの関係は友情で成り立っているので、そこで、はい、とおカネを出したら、それは商売の関係になってしまう。

稲垣:人の心を動かすのはおカネだけじゃないっていうことですよね。私、経済ってとにかく回っていけばいいと思っていて、その回す手段としては、おカネじゃなくても、お礼を言うとか、相手を元気づけるとか、おカネじゃない手段もあると思うんだけど、みんな経済イコールおカネだと。

セドラチェク:おカネ代わりになるのは、やっぱり笑顔です。

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