日本復活のために、相続税100%でもいい 高齢化社会のグランドデザイン(下)

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貧富の格差の拡大は社会階層の二極化といわれますが、二極化以上に深刻なのが階層の固定化です。階層が固定化してしまうとがんばる気が起きなくなり、不活性な下層階級が増えていって経済が土台のところから崩壊していくのです。

日本の階層の二極化の進行を食い止める手立てとしても、相続課税の強化は意味のあることだと思います。

和田:高齢者がお金を使ってくれれば、消費の減少はせいぜい人口の減少と同程度ですから、悲惨なものにはなりません。ですから、いかに高齢者にお金を使ってもらうかを考えるかが重要です。

そのためには、死ぬまでお金を貯め込んでいてもしょうがないよという、ある種のショック療法をとらざるをえない。その1つの方法が相続税100%課税なんです。

波頭:どんどん使ってもらうために、相続課税の強化とか金融資産課税とかいろいろ方法があるのだから、やってみるべきでしょう。

それをやらないから、高齢者は資産を使わずに銀行に預け、銀行はお金の運用先がないから無制限に国債を買う。そうやって集めた資金で、政府は200兆円の公共事業を行うという愚かな連鎖をいまだに繰り返しているのです。

和田:日本人は何かにつけて、海外ではそのような例がないというようなことをいいますが、日本が最も高齢化が進んでいるのですから、その国難を相続税の強化で切り抜けたという事例を世界に先駆けて発信すればいい。

それで高齢者がお金を使うようになれば内需が拡大し、国も人々も豊かになります。その姿を見て、日本モデルを評価する国も出てくるでしょう。

波頭:「老人が世界一幸せな国」というポジションを日本のブランドイメージとして全面的に打ち出してはどうでしょうか。コスプレとアニメもいいですが、高齢者がらみのほうが産業直結で、ビジネスにもなりやすい。

和田:いいですね。

波頭:高齢者を軸に国の形を描き直す。それが閉塞した日本の現状を突き崩す突破口につながるような気がします。

今日は貴重なお話を、どうもありがとうございました。

和田:こちらこそ、ありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

波頭 亮 経営コンサルタント

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はとう りょう

1957年生まれ。東京大学経済学部経済学科卒業。82年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。88年コンサルティング会社XEEDを設立。幅広い分野における戦略系コンサルティングの第一人者として活躍を続ける。また、明快で斬新なヴィジョンを提起するソシオエコノミストとしても注目されている。著書に『成熟日本への進路』『プロフェッショナル原論』(いずれもちくま新書)、『リーダーシップ構造論』『戦略策定概論』『組織設計概論』(いずれも産能大学出版部)、『日本人の精神と資本主義の倫理』(茂木健一郎氏との共著、幻冬舎新書)、『プロフェッショナルコンサルティング』(冨山和彦氏との共著、東洋経済新報社)などがある。

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