米国産牛肉、「肥育ホルモン」の衝撃的な実態

日本人は「安い牛肉の現実」を知らなすぎる

実は、1995年に食品衛生調査会の答申があり、日本では「肥育ホルモンは低容量であれば問題ない」という判断をし、残留基準値をクリアしていればよいということになったのである。国内では事実上使用をしていないが、輸入はオーケーというダブルスタンダードのような状況が成立している。これはおかしい、という声は、食品の安全性に敏感な生協や専門流通団体、またNPOなどを中心に上がっている。

しかし、なんといっても牛肉は米国にとっては戦略的な輸出品目であり、肉牛や食肉に関連したロビイストやロビー団体が利権に群がるタフな業界である。米国産牛肉を輸入しろという圧力は非常に高いものだったろう。ただでさえ日本は、米国の意向を先回りして忖度(そんたく)するお国柄であることだし……。

かくして、日本には米国から、肥育ホルモンを投与した牛肉が輸入されている。相場の関係から、それ以外の畜種や牛乳、鶏卵に関しては、そもそも輸入のニーズが低いためほぼ入ってきていないと考えてよい。

肥育ホルモンを使った牛は「驚異的」

そうした状況に、関係者はまったく目をつぶっているかというと、そんなことはない。ここで名前を出すことはできないが、食肉の流通に関わる関係者や、畜産の生産者の間では、米国産牛肉の肥育ホルモン使用を問題視する人は多い。

ある食肉流通業者の友人は、米国の大規模肉牛生産者の視察をした経験から、肥育ホルモンを投与した牛の成長スピードの早さに眉をひそめていた。日本では最低でも25カ月齢くらいまで餌を食べさせなければ出荷できる体重にならないのに、視察した牧場ではせいぜい20カ月齢の肉牛が、すぐに出荷できるくらいの体重に達していたという。

また、現在日本では30カ月齢以下の米国産牛肉を輸入できるようになっており、日本を代表する食肉卸売市場である芝浦市場では、ロースなどの部分肉に分解されていない「枝肉」の状態での上場がある。これを落札した業者によれば「およそ20カ月齢のメスなのに400~450キロも枝重がある。メスは成長が遅いので、日本でも29カ月齢くらいまで太らせて450キロ程度であることを考えると、肥育ホルモンを使った牛の大きさは驚異的ですよ」とのことだ。

読者の方で肉牛の肥育期間や枝肉重量を提示されても、その意味をパッと理解できる人はそういないだろうが、肉牛生産の知識がある人間からすれば20カ月齢で枝肉重量が400~450キロになるというのは、驚きである。ただ、それを手放しに喜ぶというよりは「おいおい、そんなありえない成長スピードになるクスリって、大丈夫?」という反応を呼ぶことが多い。

そして、もっと決定的ともいえる医療の現場からの声もある。

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