市場が注目する「1937~1938年」の再来 世界経済は瀬戸際に立たされている

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外国直接投資(FDI)は、世界のGDPの2%とやはり1990年代以来の低さで、信用バブル崩壊の後遺症がある金融セクターを見ると国境をまたぐ銀行融資額の年間伸び率は08年までの10年間の半分まで鈍化している。

こうした中でピクテは今月、向こう5年間の投資テーマを考えるキーワードとして「岐路に立つグローバル化」を掲げた。

国際貿易が伸び悩んでいる理由の1つとしては、2つの経済大国である米国と中国がいずれも内向きになる要素を抱えていることが挙げられる。米国はシェール開発の活況、中国は輸出から消費主導への構造改革だ。

ただピクテは、欧米の極右および極左勢力が唱えるナショナリズムの勢いが増していることが、国際貿易と世界経済全体を泥沼に引きずり込む恐れがあるのは間違いないとみている。

ブレグジット問題が欧州の経済統合にひびを入れかねないことに加え、米国でも11月の大統領選に向けてそれぞれ民主・共和両党の候補指名を確実にしたヒラリー・クリントン氏とドナルド・トランプ氏はともに環太平洋連携協定(TPP)の再交渉に言及している。国際貿易額の40%を占めるTPPについて、米国はまだ批准していない。

ピクテは「ナショナリズムの高鳴りが保護主義の拡大、さらに国際貿易の減少につながれば、世界経済の状況はこれまでよりもっと悪くなりかねない」と指摘。特に銀行やハイテクを中心とした多国籍企業の痛手が大きいと予想した。

1937─38年の再来か

以前に国際貿易が大きく停滞した局面を探すとすれば、1930年代まで遡る。そこでエコノミストはこの時代の教訓や政策面の処方せんを見直している。

モルガン・スタンレーは「1937─38年の再来か」と題したリポートを公表し、当時の政策的な失敗に関して詳しく説明した。つまり1929年の株価暴落とそれに続く1936年に始まった大恐慌からの回復期において、金融・財政が過早に引き締められたのだ。将来の経済成長や物価に対する民間セクターの信頼感が上向く前に、性急な政策の正常化を進めたことで、1938年までに再び景気後退に陥った。結局経済を救ったのは第2次世界大戦による政府の膨大な軍事支出と復興需要だった。

そしてモルガン・スタンレーは、08年の金融危機に対する世界的な対応とその後の景気後退に当時との類似性を見出している。

09年までに打ち出された金融・財政政策は経済活動を下支えしたものの、やはり予想物価や民間設備投資が持ち直す前に財政が引き締められたからだ。

その結果、景気後退に再突入しかねない状況にある点からすれば、民間企業を活気づかせるにはもう一段の世界的な財政刺激が必要なのかもしれない。モルガン・スタンレーは「景気後退にまた陥らないための効果的な解決策は、景気刺激策をまた積極化させることだ」と主張している。

1930年代から導き出されるのは、世界戦争のような社会的な激変を伴わずに新たな景気後退をうまく回避しなければならないという深遠な教えだ。政治的な過激主義や孤立主義、保護主義はそうした取り組みの成功をどんどん遠ざけてしまう。

(Mike Dolan記者)

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