自民党の「憲法改正草案」、今こそ読むべきだ 参議院選挙の公示にあわせて「解説書」が登場

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 「あたらしい憲法草案のはなし」の編集を担当した、太郎次郎社エディタスの須田正晴氏によると、目的はただ一つ。改正草案の中身を世に広く知らしめることだ。

この挿絵に、見覚えがある人も多いだろう

「自民党は、この草案を作りながら、その内容を選挙の争点に出すことはせず、2回の衆議院選挙と1回の参議院選挙を勝ち抜いてきました。今回の参議院選挙後は、すべての自民党国会議員が、改憲草案を含む公約が認められて当選した議員となります。この意味は大きい」(須田氏)

本書の元となった、「あたらしい憲法のはなし」は、当時の文部省が作成した、中学校1年生用の社会科教科書だ。「戦争放棄」と書かれた釜の中に兵器や戦闘機が焚べられ、そこから鉄道や船舶が走り出している挿絵は、学生の時に目にした人も多いのではないだろうか。

今では著作権が切れているため、ネットで検索すれば誰でも読むことができる。中身をみてみると、第6章「戦力の放棄」の箇所では、次のように書かれていた。

(前略)「放棄」とは「すててしまう」ということです。しかしみなさんは、けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの國よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません。

(前略)よその國と爭いごとがおこったとき、けっして戰爭によって、相手をまかして、じぶんのいいぶんをとおそうとしないということをきめたのです。おだやかにそうだんをして、きまりをつけようというのです。なぜならば、いくさをしかけることは、けっきょく、じぶんの國をほろぼすようなはめになるからです。

 

今読み返してみると、なかなか革新的な内容だ。挿絵を交え、わかりやすい言葉で日本国憲法の精神を解説している。では、「あたらしい憲法草案のはなし」では、この部分についてどのように語られているのか。

「戦争の放棄」は日本の主権を奪う?

章の題名は「戦争の放棄の放棄」に変更されていた。そして、草案作成者の論理と心情によりそって分析した結果、日本国憲法が戦争放棄を掲げなければならなかった本当の理由について、次のように解説されている。

戦争に勝った国(アメリカやイギリスなどの連合国軍)は、「日本から戦力や武器をうばい、二度と戦争ができないようにさせてやる」と考えたのです。これを「武装解除」といいます。武装解除は、国の主権をうばうことですから、戦争に負けた日本にとっては、たいへん屈辱的な(はずかしく、つらい)ことでした。
 しかし、みなさん、時代は変わりました。
 今の日本は、経済的にも発展し、りっぱな先進国の一員です。それなのに、いまも軍隊を持つことができず、おおくの先進国が参加する戦争にも加われないのは、なぜでしょうか。それは、憲法九条がじゃまをしているからなのです。

 

この他にも、「国をまもるのは、国民の義務です」、「いきすぎた『個人主義』を見直します」といった、刺激的な小見出しが並ぶ。

本書は、自民党が出している改正草案Q&Aはもちろんのことだが、自民党内におけるこれまでの議論や、草案の作成に関わった議員の発言などに目を通した上で、執筆されているという。また、法律的な観点からは、専門家による監修が入っているとのことだ。

しかし、作成に関わっている具体的な人物については明かせないらしい。「執筆の中心人物については知っている人も多いが、著者の名前ではなく文章自体を一人歩きさせたかった」(須田氏)というのが、その理由だという。

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