「英国EU残留」なら1ドル110円になるか 金融危機か収束か、問題はむしろ投票後

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遠い未来も一瞬にして織り込むのが市場とも言えるが、2-4年後は織り込み続けるには遠すぎる。英国民投票で大きく市場が動いたとしても、それは恐らく一過性のもので、むしろ反対売買のチャンスになるのではないだろうか。仮に米国株がつられて大きく下落したら、そこは買い場だろう。英国が欧州連合から離脱したからと言って、米国株が10-15%も落ちるという事態は、行き過ぎに見える。

金融市場の動きを考えるとき「Aが起こった場合B となり、Bが起こった場合Cとなり、そしてその結果Dとなる」という連想ゲームが始まるが、AからDに行く過程で知らないうちに織り込みが過剰となる。もちろん、そうした連想が欠如するのも間違いだ。米サブプライム市場の混乱が、米経済を始め、日本経済にも大きな影響を及ぼしうることを、当局者が理解してなかったことが、ショックを大きなものにしてしまった。

金融危機か収束か、その見極めポイントは?

ではどういった時に、連想通りに危機が訪れて加速するのか、それとも単に懸念に終わるか、そのところは難しいのだが、事前にポジションの積み上がりがあるかどうか、そこがポイントになると思われる。

2008年のリーマンショックの時、多くの金融機関のトップは自社のクレジットデスクに危険な金融商品がどの程度在庫として積み上がっていたのか認識していなかったし、そうした金融商品を、世界中のどの投資家が、どの程度購入していたのか、当局は把握してなかった。また、その時になぜ円高が加速したかと言えば、「円キャリートレード」や仕組み金融商品によって、想像以上に円ショートポジションが市場に積み上がっていたからだ。

今回、市場に大きな英ポンドのポジションの偏りはないように見える。ドル円市場には、常に潜在的な「アベノミクスロング」、すなわちドルロング円ショートポジションは積み上がってはいるが、今この時点でそうしたポジションが吐き出されるようにも見えない。よって、6月23日の結果を見て、市場は一気に動乱を織り込みに行くだろうが、息が続かず、戻してしまう可能性もありそうだ。

また日本の金融当局は、意外にもBREXITによる市場動乱をむしろ望んでいるかもしれない。「BREXITにおける市場動乱を抑えるため」という大義名分があれば、市場の介入に堂々と踏み込めるかもしれないからだ。

次ページ問題はBREXITの「その先」にある
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