民進玉木氏「アベノミクスへの対案」を語ろう

「こども国債」発行で国民の未来に投資を

にもかかわらず、今回「新しい判断」という言葉を使って、約束を反故にしました。「新しい判断」とは要は「今まで言ってきたことをチャラにする」ということです。こうした発言が政治不信を増幅させ、政治の根っこにある信頼を腐らせることになるのです。これだけの安定的な政権基盤があるのに、結局これまでの自民党政権と同じような人気取りのバラマキ政策に回帰しています。ただバラマキのやり方を少し変えているだけです。

安倍首相は「究極のポピュリスト」だと思います。わかりやすく言えば「今だけ、カネだけ、自分だけ」を徹底している。選挙にはいいかもしれないが、しかし「守るべきもの」は今だけではない。未来の日本や日本人を守るために国家運営をするのが本当の保守政治家だと思います。

有馬:増税を再延期することは歳入が減ることですから、当然その分いくつかの政策がなくなったり、削られたりする。そこが三つ目の「副作用」の話だと思いますが、安倍政権は「福祉は縮小します」とは言っていませんね。

財源の手当てもせず、口当たりのいいことだけ言う

有馬 晴海(ありま はるみ)/政治評論家。1958年、長崎県佐世保市生まれ。立教大学経済学部卒。リクルート社勤務などを経て、国会議員秘書となる。1996年より評論家として独立、政界に豊富な人脈を持ち、長年にわたる永田町取材の経験に基づく、優れた分析力と歯切れのよさには定評。政策立案能力のある国会議員と意見交換しながら政治問題に取り組む一方、政治の勉強会「隗始(かいし)塾」を主宰、国民にわかりやすい政治を実践

玉木:そこがまさに三つ目の問題です。増税の再延期で国の重要な社会保障政策がいくつか実行ができなくなるのです。増税は誰でも嫌です。だから安倍首相の増税先送り判断に異論が出にくいのでしょう。しかし増税延期によって「どのような政策ができなくなるか」を首相が正直に語らないでいることは極めて不誠実です。

では、どんなことができなくなるのでしょうか。「社会保障と税の一体改革」で予定されていた年金や医療、介護、子育てなどの社会保障の充実ができなくなります(編集部注:2%の再増税収入約5兆円のうち、1.3兆円を社会保障の充実に充てる計画)。主なものは、①低年金者への最大年6万円給付金交付(5600億円)や、②低所得者の介護保険料のさらなる軽減や国民保健への追加財政支援(5000億円)、③50万人の保育充実のお金(1000億円)、④公的年金の受給に必要な資格期間の短縮することで必要になるお金(300億円)などです。

① は生活補助世帯のうち65歳以上が過半を超えた実態に即して、崩壊しかかっている年金制度を財政面から支えようという大事な話です。②も低所得者の介護保険料減免の恩恵は1100万人にものぼるという重要なものです。また④に関しても、今までは25年国民年金を支払わないと年金がもらえなかった制度を改め、10年からもらえるようになる。これで無年金者を減らそうという重要な改革の一歩です。

今回の再増税延期によって、こうした社会保障の充実が反故になりかねないのです。しかし安倍政権は野党に追及されると③の保育はやると言う。では財源はどうするのか。厚生労働省に聞いてみると、「9月以降の予算編成の過程で検討する」というのです。参議院選挙が終わってからではないですか。要するに、財源の手当てはできていない。空手形なのです。でも社会保障の充実をやらないとは言わない。本来、この「入り」と「出」の説明をセットですべきなのに、そこをあいまいにしたまま「民進党は赤字国債で賄おうとしています!」などと野党を平気で批判する。これはひどすぎます。批判ばかりなのは、むしろ安倍政権の方だと言いたい。

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