景気は後退局面だが、すでに底入れの兆しも 景気・経済観測(日本経済)

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12年10~12月期は、輸出、個人消費、設備投資の低迷が続くことから3四半期連続のマイナス成長となるが、13年1~3月期は輸出の増加を起点としてプラス成長に復帰することが予想される。12年度中には景気は底入れし、今回の景気後退は過去の平均的な後退期間である15.9カ月と比べれば短いものとなりそうだ。

大型補正予算を組むことには問題が多い

こうした中、12月26日に発足した安倍新政権は10兆円とも言われる大規模な補正予算の編成を打ち出している。しかし、この時期に大型補正予算を組むことはいくつかの点で疑問がある。

まず、ここまで見てきたように景気はすでに最悪期を過ぎており、大規模な財政出動によって景気悪化に歯止めをかける必要性は、薄れてきている。大規模な予算を組んだとしてもそれを短期間で執行することは難しいという問題もあるだろう。11年度に民主党政権が東日本大震災からの復興のために大型補正予算を編成したにもかかわらず、年度内の執行が約6割にとどまったのは記憶に新しいところである。

笹子トンネルの天井崩落事故を受けて、老朽化したインフラの補修、整備の必要性がクローズアップされていることも、公共事業の積み増しを正当化する理由のひとつとなっている。ただ、短期間でまとめなければならない補正予算において、優先的に補修すべき案件を的確に判断することができるのだろうか。本予算で腰をすえて取り組むべき問題のように思われる。

新政権は14年4月の消費税率引き上げを、経済動向を見て13年秋に最終判断するとしており、この時期に判明する13年春から夏にかけての経済情勢を好転させることが大型補正予算の大きな狙いと考えられる。しかし、そもそも経済対策によってかさ上げされた数字で景気の実勢を判断することは適切とは言えない。

このように、今回の大型補正予算は問題が多いと思われるが、衆議院選挙で3分の2を上回る議席を獲得した自民・公明両党の考え方に大きな違いはないため、10兆円規模の補正予算は成立することになるだろう。せめて、補正予算にエネルギーを費やしすぎることで13年度の本予算の編成に支障が出るようなことだけは、避けてもらいたいものだ。

斎藤 太郎 ニッセイ基礎研究所 経済調査部長

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さいとう たろう / Taro Saito

1992年京都大学教育学部卒、日本生命保険相互会社入社、96年からニッセイ基礎研究所、2019年より現職、専門は日本経済予測。日本経済研究センターが実施している「ESPフォーキャスト調査」では2020年を含め過去8回、予測的中率の高い優秀フォーキャスターに選ばれている。また、特に労働市場の分析には力を入れており、定評がある。

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