「生涯現役」こそが最高のキャリア人生だ 「レスラー兼社長」武藤敬司の仕事論
使う技も空中殺法から、徐々に確実性のあるものに変えた。ドラゴン・スクリューから4の字固めへの流れなんて、俺が元祖だし、今ではみんなやってるよね。短距離型の膝蹴りであるシャイニング・ウィザードもその一環。右ヒザを当てるんだけど、そもそもケガをした場所で、バンデージをガチガチに巻いているから、相手に当てるだけだったら俺の衝撃は少ないし、それでいて相手への威力は大きい。思いがけなく、いい技が生まれたよ。
望んだとおりに物事が進まないことは多い。なるようにしかならない時だってある。 ありのままを受け止める大切さみたいなものをヒザの怪我から学んだ気がするし、そのうえで、弱点は強みに変えられることを悟った。これが俺の現役生活を、さらに長くしてくれた。
今の時代は、サラリーマンだって、勤めている会社が一生安泰とは限らないだろうし、こういった発想の転換は、人生において何かのきっかけになるんじゃないかな。
世の中の不良在庫にならないために
これはどこの世界でも一緒だろうけど、立ち回りの上手さも、ビジネスで生きるには必須だと思う。
プロレスで、不利な立場に追い込まれることを、「スクリューされる」というんだけど、そうならないためには、実力も大事だけど、やっぱり、会社の重責を担っている、しかるべきスタッフの信頼を得ることも大事。俺の場合、それで思い出すのは80年代当時の新日本の副社長・坂口征二さん。
あと重要なのは、リングというか、実際の仕事でも、自分の不調を他人に知らせない演技力は大事だろうね。それは年を経るごとに重要になっていく。そんな裏があったとしても、今でもつねに客の前では、アベレージ以上のものを見せられている自信はあるよ。
だって、はっきり言うけど、俺はリングを下りたら、ただの人なんだ。それどころか、言うことを聞かない困った人間だよ。だからこそ、「だったら仕事で輝いてやる」っていう意欲が湧いてくる。
世の中の不良在庫や、厄介ものにならない生き方をするとしたら、それは、やっぱり仕事で光って見せるしかない。すべては仕事の場で返してみせる。もうそれは、より人気がほしいとか、もっと認めてほしいとか、そういう意味じゃない。俺の職務意識だよ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら