「生涯現役」こそが最高のキャリア人生だ 「レスラー兼社長」武藤敬司の仕事論

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そりゃあこんな不安だらけの世の中だしさ、頭の中だけで先のことを考えたら、楽しい人生を思い浮かべるのは難しいかもしれない。でもそんなの俺だってそうだし、誰だって同じ境遇なんじゃないかな。だったら人生を思いっきり楽しんだもん勝ちなんじゃない。プラス思考でね。

レスラーだって、細く長くしたたかに生きる

新日本を辞めたのは、当時の会社の態勢が、プロレスでなく総合格闘技に向いていたから。要するに俺のやりたいことと違ってたんだ。この理由で退社するのは不思議じゃないだろう?

その後、全日本プロレスでは社長に就任したんだけど、先代のジャイアント馬場さんが、すべて自費で経営を賄っていたから、銀行との付き合いが皆無でね。そちらから資金を調達するにも一苦労。結局、全日本も当時の関係者と喧嘩別れする形で退団となった。

今は「WRESTLE-1」っていう新団体をやっている。俺、麻雀とかのギャンブルが好きだったんだけど、めっきりやらなくなったんだ。だって、人生自体がバクチになると、ギャンブルをやっても興奮しないから(苦笑)。

そこで得たのは、毎年、毎年決まった収入を得たほうが、長い人生レベルで考えた時、心の安定と幸福感を得られるってことなんだよな。当たり前のことなんだけど。

同じ業界のカテゴリーで、2000年代、総合格闘技ブームってのがあってさ。そこで戦う奴らは、1試合何千万円ってレベルなんだよ、ギャラが。

でも、彼らは戦うだけで、戦いを客の満足する形で見せる職人じゃないんだよな。そこがプロレスラーと違う。プロレスラーは、しっかりとした客に向けての技術がある職人なんだ。だから、体調さえ壊さなければ、ずっとできるよ。この細く長くしたたかに生きるという信条は、案外サラリーマンの生き方にも共通するものかもしれないね。

24歳の時に右ヒザを傷めたんだ。得意技のムーンサルトをやるとき、ヒザをマットに打ち続けてきたからね。治すためにあらゆる手立てを尽くしたけど、治らなかった。そのまま試合を続けてたら、今度は頸椎のヘルニアも発症した。そのせいで、全盛期に188cmあった身長が、今では184cmなんだよ。4cmも縮んだんだな。

そこで、自分を呑み込んだんだよ。言うなれば、ありのままを受け入れることから始めようと思った。たとえば、常時、素早く動くことができないなら、試合に緩急をつけた。普段はあまり動かないで、ここぞという時だけぱっぱっと動く。そしたら、試合は意外とスピーディに見えるという発見があった。

次ページありのままを受け止める大切さ
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