「炉心溶融」という言葉を禁じたのは誰なのか

政府が情報統制、自治体や住民に事実を伝えず

第三者委員会は、延べ70人にのぼる東電の関係者へのヒアリングや政府事故調査委員会の聞き取り調査結果などを元にしながら、炉心溶融を認識していながらも、「対外的には『炉心溶融』を肯定するような発言を避けるべきだとの認識が徐々に広まった」と認定した。

そのうえで、「官邸側から清水社長が、対外的に『炉心溶融』を認めることについては、慎重な対応をするようにとの要請を受けたものと受け止めていたことが推認される」とした。要は官邸が箝口令を敷いていたというのだ。

「当時、東電社内では、マスコミに発表する前に官邸側に報告し、事前の了承を得ること、対外的に『炉心溶融』を認めることについては、慎重な対応をすること、の2つの注意事項が伝播していたと認められる」とし、住民や避難誘導をする地方自治体に伝えられるべき情報が政府の統制下に置かれて伏せられていたことがわかったという。

「炉心溶融」という言葉は使ってはならない

「清水正孝社長(当時)の指示があった」と認めた第三者検証委員会の田中康久委員長(写真:記者撮影)

さらに事故からおよそ1カ月後の4月10日には、東電本店の緊急時対策本部の官庁連絡班から情報連絡班に発信用紙が送付され、そこには「経済産業大臣からの指示事項として「今後の説明およびプレス等にて『炉心溶融』という言葉は使わずに『燃料ペレットの溶融』を使うこと(以後統一すること)」、「(理由)『炉心溶融』はチャイナシンドローム等炉心全体が溶融していることを連想させるため」と記載されていたと報告書は明らかにしている。

また、この発信用紙は、情報を共有するために、福島第一原発のみならず、同第二原発、柏崎刈羽原発にもファックスされたという。炉心溶融を公表することによる住民のパニックを恐れていたことをうかがわせる内容だ。

東電が炉心溶融を公式に認めたのは5月24日。この日、東電は原子炉圧力容器内の水位や圧力、温度などを元に分析した結果を公表。そこでは1、2、3号機とも圧力容器底部に大部分の燃料が落下したという評価を初めて明らかにした。

こうした経緯を踏まえながらも、データがそろったことによる5月の公表よりも前に炉心溶融を判断できなかったことについて、報告書は「不当であったとは言えない」と述べている。その一方で、計測数値や3月12~14日当時の東電関係者の認識などから「より早期に『炉心溶融』を対外的に認めることも可能であったとの見方もできる」とも併記している。

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