前回東京五輪を成功させた池田勇人の信念 真のリーダーシップとは何か

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オリンピックが迫るこのタイミングで、日本には将来を見据えて奔走した池田勇人という政治家がいた、ということを改めて伝えたいと思い、この作品を書きました。

2020年に何を生みだせるか

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――最後の質問です。「少子高齢化と財政難に苦しむ日本で、オリンピックをやる意義があるのか?」「今からでも中止すべき」と主張する有識者も少なくありません。本当に今の日本に、オリンピックは必要なのでしょうか?

たしかに、50年前の東京オリンピックとは時代が違いますが、せっかく開催が決まったオリンピックならば、賢く活用することが大事でしょう。

1964年の大会では、新幹線や首都高速道路に上下水道など、その前には存在しなかったインフラ整備や技術革新が日本経済を飛躍的に発展させ、大きな転換期となりました。

それだけでなく日本人の心に、今なお世界に誇れる公共の精神や、倫理観などを根付かせる絶好の機会ともなりました。敗戦で一度は物心ともにボロボロになった日本が、国際社会に十分に伍してやっていけることを、国内外に示すきっかけとなったのが、かつての東京オリンピックでした。

現在の日本経済もまた、大きな転換期にあります。たとえば自動車のシェアサービス「uber」から生まれた「ウーバライゼーション」という言葉がありますが、これまでの買い手が売り手になり、サービスの受け手が提供者になる、いわゆる「シェアリング・エコノミー」の時代が始まっています。マイナス金利や仮想通貨の浸透は、経済の大前提を変貌させ、AI(人口知能)の進化は、人間の働き方も大きく変えていくでしょう。しかもその変化は、想像を超えて加速しているのが現実です。

この先、何十年も日本で生きていく私たちの子どもや孫の世代のためにも、「2020年の東京オリンピックがあったから、これが生まれたんだよ」「あのときから、日本が再びよくなり始めたんだよ」と言えるものを、これを機会に生み出したいですよね。

批判は大事です。無責任に叩いて、潰して終わりにするのも簡単です。でもせっかく苦労して獲得したものを生かさない手はありません。そのためにも、国民みんなが知恵を出し合い、みずから参加する必要があります。その手がかりは、前回の東京オリンピックにあると思います。今こそ、力を結集するときでしょう。

(構成:大越裕、撮影:今井康一) 

幸田 真音 作家

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こうだ まいん

1951年生まれ。米国系銀行や証券会社で、債券ディーラーなどを経て、95年『小説ヘッジファンド』で作家に。『天佑なり 高橋是清・百年前の日本国債』で新田次郎文学賞受賞。テレビやラジオでも活躍。政府税制調査会、財務省・財政制度等審議会、国土交通省・交通政策審議会、NHK経営委員会の各委員など公職も歴任

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