減益覚悟で番組強化 WOWOW最後の賭け

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減益覚悟で番組強化 WOWOW最後の賭け

ガンの特効薬をめぐってぶつかり合う人間模様。衛星放送のWOWOWがこの4月、初の連続ドラマ「パンドラ」の放送を始めた。初回を一般にも無料視聴できるようにしたところ、放送後、カスタマーセンターには「続きが見たいので加入したい」という電話が殺到した。

2003年以降、オリジナルドラマ「ドラマW」を制作してきたWOWOWが、ようやく連続ドラマを立ち上げた。初速は好調で、「今後も連続ものを追求しつつ、いろいろトライしてみたい」と黒水則顯・編成・制作・技術担当取締役は胸をなで下ろす。

「日本唯一のプレミアム・ペイ・チャンネル(有料放送)」を掲げるWOWOWが、昨年来、急ピッチでコンテンツ強化を進めている。2011年に地上波放送の完全デジタル化と同時に、BSアナログ放送も終了。メディアが多様化する中、地上波やCS放送等との差別化による加入者獲得は、WOWOWにとって死活問題だ。

厳しさ増す有料放送 非常事態の中期計画

「この計画は非常にショッキング。何でこんなに利益が減るんですか」

1月末に開かれた07年第3四半期決算説明会で、10年3月期からの3カ年中期経営計画に話が及ぶと会場の空気は一変、失望感をあらわにした質問が飛んだ。焦点は12年3月期の減益計画だ。売上高は08年3月期比で27%増える一方、営業利益は10%減少するという。しかも、総加入件数は33万件増える計画なのに、である。安定志向が強い放送業界でなくとも、増収減益を標榜する経営計画など、異例中の異例である。

主な理由は番組費の積み増しだ。映画など外部から調達する番組や自社制作のラインナップ強化に向け、12年3月期まで一定の上限を設けながらも徐々に増やしていく。中計は10年3月期を初年度としているが、同時に発表した09年3月期の計画でも、サッカー「ユーロ2008」の放映権等で番組費は前期比推定10%強増え、営業利益は前期から半減を見込む。10年3月期以降もその水準以上を維持する考えだ。

「放送環境が変わる中で、ナンバーワン有料放送の地位を確立するのに投資はどうしても必要」。和崎信哉社長は、繰り返し“弁明”に追われた。そこまでしないと加入者獲得はおろか、現状維持さえ難しい。そんな強烈な危機感があるのだ。

WOWOWは海外映画やアーティストのライブなど、民放とは一味違ったプレミアム感をウリにしてきた。BSデジタル放送開始翌年の02年には270万件まで加入件数を膨らませたものの、その後は純減が続き、近年は240万人近辺で低空飛行が続く。


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