10代女子に人気の「nana」は音楽業界を救うか 音楽SNSに集まる支持、あのJUJUも活用

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このほか、nanaはユーザーを対象にしたライブイベントを開催したり、そこで知り合ったユーザー同士がセッションを楽しむ例も増えてきた。

中には女子高生と30代~40代の男性プレーヤーによるコラボもみられた。nanaユーザーは10代が中心だが、実は”おじさんユーザー”も歓迎される。中には高い演奏技術を持っている人もいるからだ。10代から、中高年ユーザーにヒット曲の伴奏をリクエストする、そんなケースもよくあるという。

最近ではプロのアーティストも、10代にリーチできる販促ツールとして、注目し始めた。歌手のJUJUなどが販促活動の一環として、ユーザーとコラボするキャンペーンを展開している。コラボすることで、単なる販促にとどまらず、若いファンの獲得にもつながりそうだ。

ユーザーの中に次世代スターがいる

nanaは今後も、年齢などにこだわらず、ユーザー開拓を進める方針だ。文原氏は「音楽に関心を持つ人すべてが使うサービスに広げていきたい」と語る。10代から口コミを通じて大人に広がることは難しい。一定の費用を投じた販促や他社サービスとの連携などが必要になろう。

収益化も模索中だ。すでに動画広告は開始している。加えて、ランキング機能などが使える有料のプレミアム会員制度(400円~500円程度)を考えているが、金銭的な余裕のない若年層から課金するのはハードルが高い。

現在は9割のユーザーが国内だが、アプリは世界120カ国で使われている。英語やタイ語、フランス語、スペイン語、中国語などに対応しており、海外のユーザー拡大も中長期の課題になる。

音楽好きな若年層に広がったnana。すでに、ユーザーの中には次世代の音楽シーンを背負う才能が存在する、と考えるべきだろう。ここから新しいヒット曲やスターが生まれる可能性は十分にある。若いパワーで新たな音楽の“生態系”を作り出せるのか。nanaの成長は、CD販売モデルが崩れ、苦境にあえぐ音楽業界の将来をも左右しそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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