10代女子に人気の「nana」は音楽業界を救うか 音楽SNSに集まる支持、あのJUJUも活用
nanaが当初想定していたターゲットは、アカペラで歌うユーザーや路上ライブを行うアーティスト。が、反応したのは、一般ユーザーだった。スマホでカラオケを楽しむ感覚で利用され、サービスは浸透していった。
驚くほど若いユーザー層も、決して狙ったものではない。「音楽好き、歌好きな人が使い、仲間と交流して、楽しんでいる。スマホ完結型のサービスだったことで、若いユーザーを中心に広がった」(文原氏)。
サービス開始から4年近くとなり、今やその影響は、SNSの領域を超え始めている。
今年5月にはnanaを起点とするヒットが誕生した。一般ユーザーの廣野ノブユキ氏(25)が投稿した「Rainy」が人気を集め、これに目を付けた業務用通信カラオケ首位の第一興商が、同曲の配信を開始したのだ。
再生65万回超す大ヒット曲も
Rainyは、女性目線で言葉遊びが含まれた歌詞、ノリのよさ、哀愁を併せ持った点などが支持され、再生回数は65万回超に達した。キーは高く、メロディも複雑だが、「腕試しをしたい」「大人な感じがかっこいい」などと、nanaユーザーを大いに刺激。現在までに3500以上ものカバー音源が投稿されている。
「Rainyは自分が楽しめるように作った曲。ギターも手ぐせで、15~20分で作れた。多くのユーザーがカバーや独自のアレンジをしてくれて、本当に嬉しい」(廣野氏)。同氏は金融機関に勤めるかたわら、曲を作り、ライブも行う「会社員アーティスト」。音楽は趣味で、プロを目指すつもりはないという。これからもSNSで曲を発表し、ファンと交流、ライブを行っていく。新しいアーティスト・音楽活動のあり方とも言えそうだ。
他方、カラオケを配信する第一興商にとって、Rainyは珍しい例だった。これまでボーカロイド(ヤマハによる歌声合成技術)を利用した楽曲は多数配信してきたが、一般ユーザーが歌う曲を採用した例はなかったからだ。Rainyは配信されると、すぐさまランキングの上位に登場し、よく歌われているという。
「ユーザーの投稿数が非常に多く、これだけ求められているなら、リアルで歌う場所を提供するのが役目だと思った。ニコニコ動画(ドワンゴが運営する動画サービス)でボーカロイドのブームが起こったように、新しい場所からヒットが生まれるのは必然。これからもコラボをしていきたい」(第一興商の竹花則幸取締役)。
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