市場が神経をとがらせる英国国民投票の行方 万が一に備えるリスク管理とヘッジの方法

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一方、株式を保有せず、あくまで上下の変動に賭ける戦略も有効である。価格が短期間で大きく変動する場合、ボラティリティが急伸する。特に下落相場の際には、プットオプションの価格は急伸しやすい。コールとともに買っておけば、市場の急変の際に収益獲得の機会を得ることができる。いずれにしても、十分なリスク管理とヘッジが必要な局面であることだけは間違いない。

このようなときには、やはり金(ゴールド)に注目しておきたい。米利上げ観測が高まった時には、これが米国株の買い材料になり、ドル高基調も相まって金は下落した。しかし、米雇用統計の軟調な内容を受けて利上げ観測が後退すると、すぐに値を戻している。金市場への関心は、特に海外市場で高い。特に金上場投資信託(ETF)への資金流入は継続しており、今年に入ってからの投資資金の流入額はすでに過去2年の流出分を大きく上回っている。宝飾品需要は伸びていないが、それでも金市場の需給環境は一変していることに違いない。

金融不安の時に資産保全になる「金」

これらの投資資金はそう簡単に出ていかないだろう。米国がドル安政策に舵を切ったことを考慮すれば、金が相対的に価値を維持するものと思われる。押し目をしっかり買っておけば、今後金融不安が発生した場合でも、資産保全になるだろう。

もっとも、株式などのリスク資産が急落した際に、金も売られるような局面になれば、それこそ「総売り」である。リーマンショックの時に見られたように、金までもが売られる事態になれば、それはすでに金融パニックが発生しているときである。そのときは、何も考えずにとにかくポジションを整理し、現金化するのが賢明である。まさに「Cash is King」の局面である。嵐が過ぎ去ったところで、買い出動できるように、現金比率を引き上げておくのである。

市場がいつ急変するかを予測することは難しい。しかし、繰り返すように、少なくともいまはそのような事態になってもまったくおかしくない。積極的に仕掛けるときではなく、機動的にポジションを変化させられるように、流動性の高い資産での運用を中心に行い、今後到来する重要イベントに対処することが肝要だ。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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