市場が神経をとがらせる英国国民投票の行方 万が一に備えるリスク管理とヘッジの方法

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6日、EU残留を主張した英労働党のコービン党首(写真:ロイター/アフロ)

8日の日経平均株価は大幅上昇となった。しかし、高値更新間近の米国株と比べると日本株の低迷は顕著である。ドル円が下げ渋っていることや政策期待などが背景にあるのだろうが、そのドル円も戻りが鈍い。5月の米雇用統計を受けた急落後の反発に期待する買いが下値を支えているようだが、108円のフシ目を超えずに再び107円を割り込む場面があるなど、不安定な状況にある。市場参加者の大半が、これから続く重要イベントを迎える中で、慎重な態度を取っていることがその理由であろう。

現在の市場環境では、無理に動く必要はない。とにかく、市場環境を大きく変えそうなイベントが目白押しである。直近では、6月14・15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)、15・16日には日銀金融政策決定会合が開催される。英国のEU離脱に関する国民投票が23日に実施。その後も7月10日には参院選、21日には欧州中央銀行(ECB)の定例理事会、26・27日にはFOMC、28・29日には日銀金融政策決定会合が控えている。

FX業者が注意喚起を行うほどの事態

特に市場が神経質になっているのが、英国のEU離脱に関する国民投票の行方である。毎日のように各社の調査結果が発表されているが、現時点では賛成・反対は拮抗している。為替市場では、調査結果が報じられるたびにポンドが上昇・下落を繰り返しており、ポンド絡みの通貨の乱高下が非常に激しくなっている。その結果、個人投資家向けにサービスを行っているFX業者が、投資家向けに注意喚起を行うほどの事態に発展している。

ポンドの値動きはそもそも激しいのだが、今回の材料でその激しさが増している。国民投票の結果がどうなるかはわからない。このような状況の時に、中長期で為替ポジションを持つのはきわめて危険である。リスクを限定し、上下どちらに向かっても対処できるようにしておくのが得策だ。

株式市場も高い関心を向けている。英国の国民投票で、EU離脱が決まった場合にはドルが買われる一方、クロス円が下落することで、円高が進む可能性が懸念されている。ドル円の下落はそれほど大きくならない可能性があるものの、市場はいまのところ、最終的には離脱は否決されるとみており、そうならなかった場合のインパクトは小さくない。

今の時点でさや当てをしても仕方がないのだが、万が一の場合に備えて対処するのが、市場で生き残るための処世術である。株式についても、持ち高をある程度減らしておくのが賢明な判断だ。あるいは、オプションを利用する手もある。相場が上下どちらに向かうかわからない。株式を保有しているのであれば、その見合いでプットオプションを購入しておけば、ある程度のリスクヘッジにはなる。コールオプションの売却も加え、コストを下げることも可能であろう。

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