安倍政権誕生で為替はどう動くか? 市場動向を読む(為替)

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① 総選挙が終了し、「うわさで売って、事実で買え」という典型的な動きが出やすい。

② 12月19-20日に行われる日銀政策決定会合で、一部に追加緩和見送りを予想する向きもある。仮に本当に見送りとなると、円買い戻しにつながる可能性は非常に高い。

③ 米国のいわゆる「財政の崖」に関して依然として進展が見られず、このまま進展が見られないと、市場のリスク回避志向が一気に高まり、円買いの動きとなってしまうリスクがある。

④ 来週から欧米はクリスマス休暇入りする。今週の日銀金融政策決定会合が終わると、日本からも今後一カ月は特に新しい動きが出る可能性が少ない中で、大きなポジションを抱えたままにしておくのはリスクが高い。

こうした状況でも、今週を通じて一段と円安が進むか、ドル円相場が1ドル=83円台を維持するようなら、想定している海外勢を中心にした短期的な円売り以外のフローも、最近の円安の流れを支えていると考えられる。この場合は、ドル円相場の見通しを変更する必要が出てくるであろう。

期待に応え続けるために新政権は何をすべきか

新政権が市場と国民の期待の双方に応えていくためには、政権公約にも記されている、成長戦略の推進、大胆な規制緩和、日本の産業を再興させるための政策などの構造改革を実施していくことが必要である。

再開される経済財政諮問会議や新設される日本経済再生本部などを通じて、国民が将来に自信を持って投資や消費を行えるような経済構造を構築することができれば、実体経済が改善し、それを映し出す鏡(市場)に映る姿も本当の変化を見せ始めることになる。

安倍自民党総裁は、金融政策に圧力を掛けることで鏡の位置を変えることには成功を収めた。もっとも、鏡の位置が元に戻る前に実体経済を少しずつでも目に見える形で変えて行かなければ、いつしか鏡は本当の姿を映してしまうことになるだろう。

 

佐々木 融 ふくおかフィナンシャルグループ チーフ・ストラテジスト

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ささき とおる / Tohru Sasaki

2023年12月から現職。日本銀行で調査統計局などを経て国際局(当時)為替課で為替市場介入を担当し、ニューヨークで米国金融市場分析も行った。2003年4月からJPモルガン・チェース銀行でFXストラテジストや市場調査本部長を務め、金融市場を調査・分析してきた。著書に『弱い日本の強い円』(日経プレミアシリーズ)。

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