ワンピース監督が語る「尾田ワールド」の凄さ

尾田栄一郎は敵キャラの人生年表まで作る

ルフィがルフィらしくすることを心掛けた

――本作品の制作で気をつけた部分は?

普通のアニメを作る時は、キャラクターを成長させるためのドラマを作ることが多いわけです。そうすると、たとえば観客に泣いてもらうストーリーのために、主人公のキャラクターが不自然になることも多々ある。

でも僕はそういうのをせずに、とにかく(主人公の)ルフィがルフィらしくすることを心掛けました。ルフィのキャラクターが変わってしまったら終わりだと思いますから。そのためにもマンガを懸命に読み込んだり、尾田先生に監修してもらったりしました。そうすることで、観客がそのキャラクターに共感してくれて、自然と泣けたり、嬉しくなったりするのではと思っています。

そういう意味で、作り手が観客にこう感じてほしい、といった作為は、表に出さないようにしました。とにかくキャラクターを尊重するように、というのが気をつけた点ですね。

(C)尾田栄一郎/2012「ワンピース」製作委員会

――今回の制作過程で苦労した点は?

今回の映画は「最後の海 新世界編」を基にしているわけですが、コンテの作業をやっているときは、原作ではまだ「最後の海 新世界編」に入っていなかった。だから毎週、『少年ジャンプ』を買っては、新しい技を確認していました。

たとえば麦わらの一味であるサンジの足が燃える「ディアブルジャンプ」という技があるんですが、今までは足だけが燃えていたので、絵コンテもそれに合わせて描いていたんです。それがある日ジャンプを買ってきたら、「全身が燃えている!」と慌てて描き直した(笑)。

あの”尾田栄一郎”と一緒に作品作りをするということ

――09年の『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』に続き、本作でも尾田先生が総合プロデューサーに名を連ねていますが、その役割は?

長峯達也(ながみね・たつや)
映画監督
東京都生まれ。東映アニメーション所属。「ハートキャッチプリキュア!」シリーズや「冒険王ビイト」を手掛け、映画では「デジモンセイバーズTHE MOVIE 究極パワー!バーストモード発動!」「映画 Yes! プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険」などの監督を務める。

世界観を統一するという部分で、基本的には、シナリオを確認してもらったり、絵コンテを直してもらったりといったことをお願いしていました。「セリフが違う」とか、「このキャラクターはこういうことを言わない」とか。もちろん僕もかなり研究はしていますが、それにはどうしても限度がある。

たとえば、ゼットという、今回の映画だけに登場するオリジナルキャラクターがいるんですが、映画を作っているうちに僕がどんどんとゼットの心情に入り込んでしまうんですよ。そうすると、尾田先生から「ルフィが主人公なんだから、ゼットに感情移入しちゃダメだよ」と指摘してもらったり。そんなやり取りがあるわけです。

尾田先生の役割とは『ONE PIECE』の世界をきちんと守ること。結局、オリジナル作品をほかの人がやると、どうしても作者と同じようにはならないし、微妙なところでズレが生じてしまう。僕もオリジナル作品を手掛けるときに、「そこは違うな」と、イライラしたことがあったので気持ちは分かります。マンガの連載があって忙しいのに、尾田先生にはコンテを全部読んでもらったうえに、自ら加筆の描き込みもしてくれました。

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