やはり尾田先生の言うとおりにやればうまくやれるという安心感がありました。みんなの力が同じ方向に向かないといけないですから。今回の現場に関しても、それぞれがそれぞれのパートで能力を発揮して、同じ方向に向いてくれたことで出来上がった。それはやはりてっぺんに尾田先生がいるから。映画のプロジェクトチームとしては、今回はかなりよくまとまっていたと思います。
尾田栄一郎は敵ボスの年表まで作る
――映画の新キャラクター、ゼットのキャラクター作りに尾田先生も深くかかわったと聞いています。
そこで尾田先生のキャラクター作りの裏側を垣間見ました。敵のボスとなるゼットは74歳ぐらいのキャラクターですが、74年分の歴史があるわけです。僕なんかは、「過去に妻を殺されて悲しいことがあった」という3行ぐらいのバックグラウンドでキャラを作ったのですが、尾田先生から「それじゃダメだ。ゼットの年表を書いてくれ」と言われました。
そこで先生からヒアリングをして、何度かやり取りをしながらゼットの年表を作った。すると尾田先生もお忙しいのに、その年表に沿ったエピソードを絵で描いてくれるんです。感激しますよね。だから劇中に登場するゼットの過去のエピソードは、尾田先生が描いた絵をそのまま使っている。ゼットの子どもの頃の絵とかも、全部そのまんま。せっかく描いていただいたんだから全部使わなきゃもったいない。
さらに尾田先生には、監修だけじゃなく、映画の元になるネタをたくさん出していただきました。たとえば冒頭にある花見の宴会のシーン、そこのシーンは尾田先生が自らネーム(せりふ)を描いてくれました。それを助監督が絵コンテに起こして、そのまま映画に使っているんです。
――東映アニメーションの歴史において、「ドラゴンボールZ」「マジンガーZ」など「Z」のつく作品はいくつかありますが、いよいよ『ONE PIECE』にも「Z」が付いたわけですが、このタイトルの由来は?
「Z」というのは、おそらく究極という意味だと思うんです。「聖闘士星矢」ではギリシャ文字の最後の文字である「Ω(オメガ)」を付けていますし。
僕が参加した時点で、先に敵のボスの名前がゼットと決まっていた。一方、タイトルは、海賊を全滅させるといった話がテーマになっていたので、海賊の夢を潰す「ドリームクラッシャー」「ドリームスマッシャー」というものを当初提案していました。しかし尾田先生からは「それでは分かりにくい。(ボスが)ゼットだから(タイトルも)ゼットでいいじゃないか」ということで決まった。一瞬にしてガツンと核心をつかむ技術はさすが。マンガの世界でトップをとっているだけのことはあるなとそのとき感心しました。
(下)に続く
(撮影:今井康一)
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