昨今の「貧困コンテンツ」ブームが危険な理由 底辺ライターが「貧困報道」に物申す!

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

彼女を取材記者である僕に紹介してきたのは、埼玉県南部を中心に活動している援デリ(売春組織)の経営者男性であった。ちなみに彼に依頼していたのは「援デリ業界で稼いでいる女性と稼いでいない女性の両方を紹介してほしい」。たいへん失礼ながら瑠衣さんは、その「稼いでいない援デリ嬢」として援デリ業者が取材をセッティングしてくれた取材対象者のひとりだった。

カラオケボックスの個室に入ってからの瑠衣さんの話を要約するとこうなる。

着ているロリータ服は老舗ブランド「ジェーンマープル」の一点もので、15万円する。家のクローゼットの中のロリ服全部をオークションで売ったら200万円以上の価値がある。

瑠衣さんの彼氏は埼玉県内のローカルホストクラブに勤めるホスト。独立予定があって来月にはこのホストの地元の埼玉県上尾市にホストクラブを新規出店する。ちなみに上尾は瑠衣さんの出身地でもある。

先月はこの彼が勤めるホストクラブで一晩40万円溶かして、まだ売り掛けありだが全然余裕。

余裕の理由は、現在、瑠衣さんにはほかの援デリグループとデリヘル店からの引き抜きの話がきていて、引き抜き料は20万円で保証(客がつかなくても貰える日給)が3万あるので、来月末には売り掛けをきれいに払えるから。心配すんな。

今、稼げてないのは所属する援デリ業者の打ち子(男客をつけるキャスティングスタッフ)がクソ客ばかり引くクソ打ち子だから。

ウソで固めたセルフストーリー

見事に、紹介者である援デリ経営者から聞いていたプロフィールとは食い違う自己紹介やセルフストーリーの数々だった。経営者の語る瑠衣さんとは、一応都内の売春業者が暗黙で決めた価格協定=最低売春単価2万円の額を大きく割り込む、1本1万2000円で売春をし(そうしなければ客がつかず)、リピート客もゼロというド底辺援デリ嬢。1カ月売春をして15万円も稼げないにもかかわらず、無断遅刻やドタ直(機嫌が悪いなどの理由で無断でホテルから自宅に直帰)の常習犯だと聞いていた。

なぜクビにしないかと聞けば、彼女が「NGゼロ嬢」で、このグループに所属するほかの援デリ嬢の誰もがNGというタイプの客でも大丈夫だからだという。なお、この援デリ業者における瑠衣さんの影のコードネームは「ホークちゃん」(人気漫画『七つの大罪』に登場する残飯処理部隊の豚から)である。

この初回の取材に要した時間は3時間。激しい貧乏揺すりをしながらマシンガントークをする瑠衣さんを見ながら、こう思った。この子は間違いなく貧困者である。だけど彼女が僕より前に大手新聞やテレビなどメジャーなメディアに取材されるようなことがなくてよかった……。

次ページなぜ自分はこの原稿を書いているのか
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事