男性はこういうもの、女性はこういうもの、子どもはこういうもの。日常の中で培われたあなたの認識があったればこそ、その発見は可能だったはずだ。その認識をはっきりと説明できるようになれば、この発見が実際に多くの人に受け入れられる「一般性」に繋がる可能性は高い。
こうした直観に重きを置くリサーチ手法は、マーケティング分野にも部分的に浸透しつつある。コンシューマーインサイトをとらえるという話や、オブザベーション(参与観察)、あるいはビジネスエスノグラフィーと呼ばれるようなものだ。
いずれも、相手を調べることを本来的な目的とはせず、自分が気づいてしまったことに注目し、そこからアイデアを広げていく方法だろう(相手の本音や深層心理なるものを探る手法と誤解され、ほとんど変わらなくなっているような話も聞くが)。
冒頭の話に戻ると、この手のやり方はたぶん、ソーシャルメディアと相性が良い。そんな気がしている。
ソーシャルメディアでは、まさに日常の一風景が語られることが多く、アクセスも容易だ。
何か思ったり考えたりしたときに、すぐに連絡を取って追加的なアクションを起こせる。僕たちが日常を見つめ直し、新たな驚きを得るという点では、良い場所なのだと思う。
ソーシャルメディアは、他人を見る場所ではなく、自分自身を見つめる場だ。同時に、自分というもの自体、すでに他人のありようを映した鏡なのである。
【初出:2012.12.22「週刊東洋経済(PB商品の裏側)」】
(担当者通信欄)
商品開発=クリエイティブな才能を持った特別な人の仕事、というイメージもあります。が、この新しい「発見」の方法においては、普通の人こそ、自分の中に希望を見出せるのでは? 平凡な感覚の持ち主であればあるほど、多くの人の感覚を理解することができる、そんな可能性が、鏡としての自分に秘められているのかもしれません。好き嫌いの激しさも、もしかしたら悪いことばかりではないかも…などと都合のよいことを考えてしまいました。
さて、水越康介先生の「理論+リアルのマーケティング」連載第4回は2013年1月21日(月)発売の「週刊東洋経済(特集は、65歳定年の衝撃)」に掲載です!
【商学連携の可能性? 柔らかいマネジメント】大学生が商店街の潤滑油になる?
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