その「気づき」でマーケティングが動く?
これまでは、性別や年齢のようなセグメントはあまり意識せず、総じてデザイン性や機能性をアピールし、販売していたという。
しかし、くだんの書き込みの内容から、「この照明ランプの明かりがあれば小さな子どもが安心して寝られるから」という理由で、子どもを持つ女性が買ってくれていたことが明らかになった。
なるほど、というわけで、紹介の仕方を少し変え、母親と子どもが一緒に寝ているシーンの写真などを追加しようという話になったらしい。
大事な気づきだと思う。ソーシャルメディアに限らず、マーケティング・リサーチには思いがけない発見がある。
男性が買っていると思っていた商材が、意外に女性に売れていた。想定していたのとは別の使用方法が広まっていた。と、いろいろな発見が、次の一手に繋がる。
だが、ここで一つ疑問も湧いたという。書き込みといっても、たかだか数人の話だ。みんながみんな、同じ理由でこの照明ランプを買うとは限らない。女性たちの声は、例外的だったのではないか。どんな理由で購入されているのか、あらためて調べてみたほうがいいのではないか?
よくありそうな疑問だ。たとえば、ある商材が若い女性に売れていると店舗回りの営業が店長から聞いたり、実際にその光景を見たりする。
その現場の発見が会議に上げられ、「では、もっと的を絞った販促を」、となるわけだが、上司はこう言うだろう。
それは本当か? ちゃんと定量的にアンケート調査をしたのか? 君の意見や伝聞ではなく、客観的なデータに基づいて提案してくれよ――。
一理ある。立ち止まってみることは重要だ。僕たち研究者もそう言いたくなる。けれども、その後、どこに進むべきかは、一考に値する。
おそらくこの上司は、女性たちの書き込みや行動に一般性があるかどうか、もっとたくさんの人に聞いてみろと言っている。しかし、その方法ではうまくいかないことも多い。アンケート調査でみんなが欲しいと答えても、それが購買に繋がるかどうか、はっきりしないからである。
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