「保育園建設反対」議論に違和感を感じる理由 単一機能しかない街に未来はあるのか

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この田園調布が長らく良い住宅地の典型とされていたことを考えると、良い住宅地の概念の原型はここにあると思われる。緑が濃い高台で、静かでよそ者が入ってこない、住むという単一機能の街である。

また、高度経済成長期以降、郊外の住宅地を売る時のセールストークとして閑静な住宅地という言葉が使われたことも、住宅地のイメージを固定するには役立った。郊外の、何もないところと言えば売れないものも、閑静な住宅地と言えば売れる。かくして「閑静な住宅地信仰」は一般化、特にある程度以上の年齢の人には絶対と思えるほどの存在になったのである。

だが、こうした「大正・昭和型」の街作りも過渡期を迎えているのではないか。田園調布は都心に比較的近く、ブランド力もあるため、単一機能の街だとしても、今のところはまだ良い(と言っておこう)。

単機能な街は今の時代に合っていない

しかし、同じように職住分離を突き詰め、住むという機能だけで作られた郊外の街が今、どうなっているか。多くの人はご存じだろう。多摩ニュータウンや郊外の一戸建ても含めた団地では高齢化、空き家化が進展、商業施設の撤退などで住みにくくなり、地域自体が衰退し始めているのである。さらに今後も人口が減少していくとなると、その街がどうなるかは言うまでもない。

つまり、かつては輝いていた閑静な住宅地という単機能な街はいまや、時代に合っていないとも考えられるのである。

街を考える数字のひとつに財政力指数がある。総務省の説明によると「地方公共団体の財政力を示す指数で、基準財政収入額を基準財政需要額で除して得た数値の過去3年間の平均値。財政力指数が高いほど、普通交付税算定上の留保財源が大きいことになり、財源に余裕があるといえる」とあるが、非常に簡単に言えば、財源にどれだけ余裕があるか、自治体がどれだけ金持ちか、を表す数字だ。

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